S波反射法地震探査の結果から次のことが明らかとなった。
・インパクターのS波断面図では、上総層群上部(深度約500m)の反射までは捉えられている。また、ミニバイブのS波断面図では、基盤上面までの反射を捉えることができている。
・インパクターのP波断面図では、先第三系基盤(深度約1500m)までの反射を捉えられている。
・S波断面図で深度500mの反射波は、往復走時で約2.0秒の反射に相当する。インパクターによる調査では、震度500m程度までの速度構造が求められている。また、ミニバイブを用いたS波補足テストでは、基盤岩上面付近(深度約1500m、往復走時約4.2秒)までの反射波を認めることができる。深度約1500mの反射面は受振器の展開長(500m)と比べて深すぎるため、基盤直上の区間速度については充分な精度はない。
・500m以浅の浅層部では、P波の断面図では連続性の良い反射波がみられる。対応するインパクターのS波断面図ではあまり連続性が良くない。
・ミニバイブのS波断面図ではインパクターのS波断面図と比べて連続性は向上し、深度断面図で比較すると浅層部ではインパクターのP波よりもミニバイブのS波の方が高分解能になっている。
・ミニバイブによるS波深度断面図では深度約100mの反射面が顕著である。これは、P波断面図でほぼ同じ深度の反射面に対応している。この反射面は、インパクターのS波断面図では顕著ではないが、これはデータ取得時のノイズと、それが速度解析の精度に及ぼす影響の結果である。逆に、インパクターのS波断面図では、測線南側で深度約250mの反射面が顕著であるが、これはミニバイブのS波断面図にはほとんどあらわれていない。これは重合数の違いに起因している。
・P波とS波の表層構造図(図2−31と図2−32)を比較すると、表層第一層の厚さはほぼ同じと考えられるが、P波の第二層の速度がほぼ同じ値で求まっているのに対して、S波の第二層の速度は横方向への変化が大きい。この側方変化が、浅層部の反射波の不連続性としてあらわれていると考えられる。
大型バイブロサイスを震源とする3成分受振器の観測(今回のデモ、図2−16−1)参照)でもS波(SV波)が観測されており、この結果を図3−5に示す。これは単一の発震記録であるが、ミニバイブのS波発震の水平成分と大型バイブロサイスのP波発震の水平成分を重合直前まで同じ処理をおこなって比較したものである。
ミニバイブのS波(SH波)はクロスライン成分に、バイブロサイスのS波(SV波)
はインライン成分に含まれることになる。図3−5のこの両者はよく一致していることから、大型バイブロサイスのP波発震によりS波が発生していることが確認された。