(8)既存資料との対比

図2−83は「船橋市地域の地下地質と地盤沈下観測井」(楡井他、1972)と再解析後のSPAC法によって推定された地下構造の対比結果である。上部から、沖積層及び下総層群がVS=0.38km/sec〜0.66km/sec、上総層群がVS=0.89km/sec〜1.12km/sec、第5層のVS=1.15km/secの速度層が中新統(三浦層群)に対比されると考えられる。深度について着目すると、「船橋市地域の地下地質と地盤沈下観測井」では中新統上面の深度が1,920m、これに対比すると考えられるSPAC法で求められた第5層の上部の深度は2,100mであった。また、先新第三紀基盤は第6層のVS=2.95km/secの速度層に相当すると考えられるが、これについても文献資料では、深度2,149mとなっており、SPAC法で求められた深度2,380mとは必ずしも一致していない結果となった。

微動アレーで得られた結果を観測した時の7地点の地震計の中心の点データと位置付け、試錐孔との位置関係についてみると、試錐孔は微動の点から東におよそ2km離れた位置にあり、中新統の地質構造が南西側に向かって深部化することから、微動アレー結果と試錐結果は誤差の範囲において概ね整合性があると考えられる。

図2−84は反射法で推定されている基盤深度を用いて位相速度の理論計算を行ったものである。2,200mの深度とした場合、周波数0.2〜0.24Hzの間で、多少観測値からのずれはみられるものの、誤差の範囲において概ね整合性があるといえる。

図2−85−1 は既知情報を使用せずに解析を行う場合、初期モデルの層数を決定する過程を示したものである。横軸に波長(km)、縦軸に位相速度(km/sec)をとり、分散曲線上の変曲点を設定し、「位相速度−波長」形式から「位相速度−周波数」形式に変曲点をプロットする方法を用いた。この場合変曲点の位置を決定するにあたっては、速度構造の初期モデルの設定ということで厳密ではなく、大まかに「目視」によって変曲点の位置を決めた。図2−85−2図2−85−1で設定した変曲点を層の境界に対応させ解析したfGA探索結果であり、図2−85−3 はその微調整解を示したものである。5層で解析した結果求められた基盤の深度は、6層モデルの結果と同じ2,380mであり、S波速度も2.95km/secと同じ値が得られ、既存資料などが無いような場所においても位相速度と波長の関係から変曲点の個数を求め、層数を決定し初期モデルを設定し解析することができる。