(1)下総深層地殻活動観測井(SMU)

本地点は先新第三紀基盤まで到達している試錐地点であり、VSP調査や各種物理検層結果等の情報が確認されている。これらの既存資料との対比によって微動アレ−調査手法の有効性、適用性を判断するに適する地点である。本地点では以下に述べる2種類の方法について最適と考えられるアレ−配置を設定した。中心点は、後述の図に示すように下総観測井施設敷地内に置いた。

@SPAC法

微動源は、一般に時間的にも空間的にもランダムに存在するために、微動の到来方向を予測することは不可能である。しかし、微動がアレー内に時間的にも空間的にもランダムに存在する場合は、それについて微動に含まれる表面波を分散の形で検出できるアルゴリズムが開発されている。そのアルゴリズムの要請する最適のアレー形が円形アレ−である。

アレ−サイズと可探深度の一般的な関係はない。しかし数値シミュレ−ションによる「アレ−サイズと推定可能な位相速度の最大波長との関係」についての考察例(宮腰・他、1996)によると、SPAC法では、推定可能な位相速度の最大波長はアレ−の最大半径の10倍程度、F−K法では、5倍程度と見積もられている。

この最大波長を見積もるためには、位相速度か周期のどちらかが既知でなければならず、どちらの量も未知の状態のため、この種の地質条件と類似の構造を参照し、この程度の深さを反映する波としては、周期約3秒、位相速度約1,000m/s以上を想定し、SPAC法ではそれに見合うアレーの大きさとして半径 300mであるが、より安全を期し、半径 500mに設定した。また、深度の浅い場所をとらえるためにアレーサイズ 350mおよび100mを設定した。なお、アレーを構成する観測点(地震計設置点)数は、7点とした。

アレーの形状は、図2−54に示すように二重正三角形とし、その各頂点および重心の計7箇所(●印)に地震計を設置した。設置場所の具体的な決定については、1/2,500の都市計画図上で下総観測井を中心とした同心円上に配置できるような場所を選定した。すなわち、構造物や立入禁止場所および水上の場所等を避けるように二重正三角形の中心を軸として回転させ、裸地やアスファルト道路、コンクリート舗装の場所を選定した。巻末に、SPAC法の各地震計設置点位置を「点の記」として示した。

アレ−サイズは、二重正三角形の外側半径を100m,350m,500mとし、二重正三角形で各1回,計3回の観測を行った。表2−7にアレ−サイズを示す。なお、後述のF−K法用に観測した外側半径1,000mの二重正三角形配置の観測デ−タも解析に供した。

AF−K法

F−K法のアルゴリズムでは、その原理としてアレーの形についていろいろな設置間隔があること、いろいろな方位をカバーするような配置であることが望ましい。さらに到来方向がおおよそ予想される場合はその方向に、観測点がより多く配置されることによる効果の有無を確認するために以下のような観測を実施した。

地下深部の情報を含む比較的長周期の波が潮汐や低気圧等による波浪に起因することを考慮して、図2−54に示すような東西方向に地震計を5点配置(長軸全長1,800m)し、南北方向に地震計を3点(短軸全長600m)配置する十字型配置(中心点は重複のため計7点)とした。設置間隔は、できる限り多くの距離組み合わせが得られるよう配慮した。この十字配列の場合は、2回の観測となる。さらに微動到来方向がどこからでも対応できるSPAC法と同じ二重正三角形配置(外側半径はSPAC法の倍の1,000m)でも観測した。表2−7にアレ−サイズを示し、別冊資料にF−K法の各地震計設置点位置を「点の記」として示した。