(2)三河地域の地質概要

図3−1−2に伊勢湾周辺地域の地質と活断層分布、図3−1−3に残差重力異常分布を示す。また、表3−1−1に地質構成を示す。

1)地層名

伊勢湾周辺地域では、同じ地層でも、地域により異なった地層名で呼ばれている。表3−1−1に示すように、本報告では奄芸層群および常滑層群を東海層群、一志層群、鈴鹿層群、師崎層群などを中新統、美濃帯、領家帯、三波川帯、秩父帯などの中古生層、変成岩類および花崗岩類を基盤岩類と呼ぶ。また、東海層群より上位の堆積物を第四系とする。

豊橋平野の反射法・屈折法地震探査(愛知県、2003、2004)によると、本地域では第四系の下位にP波速度で2.9〜4.4km/sを示す地層が推定されている。本層に相当する地層は地表に分布していない。また、本層の分布が推定される位置での深層ボーリングデータでは、本層は基盤岩類として記載されている。性状が明らかでない地層であり、本報告では地層名として、反射法地震探査の区分であるD層をそのまま用いる。

2)地質分布

地質平面図と地質構成表に示すように、伊勢平野、濃尾平野および岡崎平野は同じ地質構成であり、第四系、東海層群、中新統、および基盤岩類が分布している。一方、豊橋平野には東海層群と中新統は分布していない。東海層群および中新統の南限は、岡崎市南方の篠島、佐久島付近にある(中条・高田、1970)。

豊橋平野の反射法地震探査によると、本地域の地層はA〜E層に区分されている(表3−6−1−1表3−6−1−2)。E層は基盤岩類であり、D層は1)で述べた性状が明らかでない地層である。A〜C層は堆積層とされているだけで、地層名は示されていない。A〜C層は反射面が水平であり、P波速度は1.7〜2.2km/sである。層厚は200〜300mであり、渥美半島の第四系(渥美層群)とほぼ同じ厚さである。これらのことから、A〜C層を第四系と解釈した。

3) 地質構造

岡崎平野より東側の三河・幡豆山地には基盤岩類が露出している。東海層群と中新統は基盤岩類にアバットしており、これらの地層の堆積盆地はその西方に広がっている。

東海層群は北北西−南南東方向の軸をもつ背斜・向斜を繰り返しながら、全体として、西方に厚くなる。

伊勢湾断層は東側隆起、西側沈降の逆断層であり、猿投山断層および大高−高浜断層は西側隆起、東側沈降の逆断層である。これらの断層の活動により、知多半島の隆起帯が形成された。岡崎平野は猿投山断層および大高−高浜断層に挟まれた沈降部にあたる。

4)残差重力異常分布

知多半島南部から中部にかけて、北北西−南南東方向に低重力異常がのびている。この低重力異常は、ボーリングデータによると、東海層群および中新統が厚い地域にあたると推定される。

知多半島中部の西方海域では、残差重力異常コンターが密な部分が北北東−南南西方向にのびており、伊勢湾断層の位置と一致している。伊勢湾断層は東側隆起、西側沈降の逆断層であり、東側の高重力異常と西側の低重力異常は、伊勢湾断層による変位を示している。

知多半島南方の内海断層(図3−1−2のM)は、北側隆起、南側沈降の逆断層である。しかし、重力異常は北側が低重力異常になっている。後述するように、中新統は内海断層の上盤側(北側)で厚く、下盤側(南側)で薄い(図3−3−3−3東経136.9゜南北地質断面図参照)。内海断層は中新統が堆積した時期には、正断層として活動し、断層北側に中新統が厚く堆積し、その後、北側隆起の逆断層として活動しているものと推測される。

岡崎平野の北西縁付近(北緯35゜、東経137゜付近)に弱い低重力異常がある。大高−高浜断層(図3−1−2のJ)と猿投―境川断層(図3−1−2のI)の南東側が沈降域となり、低重力異常を示すものと推測される。