3−4−3 2.5次元波形シミュレーションによる検証

前節の解析は1次元的であり、大局的な基盤深度は確認できたと考えられる。しかし、盆地規模が比較的小さい堆積平野(例えば、豊橋平野)では、内部の基盤深度が局所的に急変しており、その微細な空間変動については考慮できない恐れがある。この場合は、空間2次元、3次元を考慮した解析が必要であると考えられる。特に、地震波形そのものの比較を行う場合には、盆地生成表面波を含む後続波の生成過程を考えると、2次元、さらには、3次元による解析が求められる。

複雑な地下構造における地震動を評価する為には、膨大な計算時間および計算機メモリーを必要とする数値的手法に頼らざるを得ない。現実問題として、計算コストを削減する為に、地下構造モデルや震源モデルに対して単純化するような近似を行うことが多い。この節では、3次元シミュレーションを行う前に、点震源+2次元構造(波動場3次元、構造2次元、ここでは2.5次元と称する)問題としてシミュレーションを行う。

これまでの調査結果から、堆積層の速度は速度が深度と共に漸増しているモデルが現実的であると考えられるが、各種解析手法の違いにより層区分の定義については必ずしも整合していない。2.5次元波形シミュレーションでは、堆積層第1層のS波速度が、約400m/sから約700m/sまで深度方向に漸増するモデルを作成した。

計算領域は、知多半島沖(東海市・知多市)から、岡崎平野、豊橋平野を横切り浜名湖に至る約80kmの区間を設定する(図3−4−21)。なお、投影ラインの東端の知多市・東海市は、大規模な石油精製施設が存在するので、やや長周期の地震動特性を把握することの社会的意義が大きい地域である。