モデルT(2.5次元、図3−2−12)
反射・屈折法から得られた深度モデルのなかでA〜C層をT層、D層をU層、E層をV層とした。各層の密度として、T層は堆積層であると考えられるので、既存資料からその密度値を2.0g/ccとし、U層とV層の密度差を0.45g/cc程度と仮定して反射・屈折法から得られた深度構造図を用いて、2次元のフォワードモデリングを行った。この場合、U層およびV層の密度としてそれぞれ2.25g/ccおよび2.70g/cc程度を与えてやると、測線の東側の観測重力値を概ね説明することができる。なお、観測重力値としては、仮定密度2.0g/ccのブーゲー異常値を用いた。ただし、測線の西側では、横方向にある高密度の物質(基盤)の影響を考慮するために2.5次元のモデリングを行う必要がある。
モデルU(2次元、図3−2−13)
モデルTで得られた各層の密度を用いて平成14年度反射法測線に沿った深度モデルに対して重力のフォワードモデリングを行った。測線の北側で基盤密度を南側より少し小さくすると全体のブーゲー異常値を説明することができる。本測線は中央構造線と交差している可能性が大きいため、測線の途中で基盤密度が変化することは十分考えられる。この地域での基盤の密度情報が不足しているのではっきりとはいえないが、得られた基盤密度(中央構造線の南側で2.70g/cc、北側で2.55g/cc)は、関東地方での基盤密度(防災科技研成田観測井:三波川帯変成岩:2.75g/cc前後、チャート:2.9g/cc前後、防災科技研館林観測井:(領家)花崗岩類:2.6g/cc前後)から類推すれば概ね妥当な値であると考えられる。また、D層については、愛知大学地学研究室の沓掛俊夫教授によれば、みかぶ帯のオフィオライト(海洋性超苦鉄質岩,海洋性玄武岩など)の破砕したものである可能性もある(名城大学理工学部 牧ノ内猛教授の私信による)ため、密度値2.25g/ccは許容範囲内(図解物理探査(1989)によれば玄武岩の密度は2.25〜3.25g/cc程度)と考えられる。
以上から、南北測線のブーゲー平板近似からの逸脱は、密度構造の変化の影響が大きいと考えられる。