平成13年度の調査から得られた分散曲線を用いて、遺伝的アルゴリズムによるインバージョンを用いて、O−6地点におけるS波速度構造を推定した。インバージョンには、O−1〜O−7の7点を用いた多地点同時解析(馮ら(2003))およびO−6単独での解析を行った。インバージョンは以下の条件で行った:
・ 層の数は平成13年度の解析と同様に8層とした。
・ S波速度の探索範囲は平成13年度の解析に比べ広めに設定した。
図3−1−9−1に推定された速度構造図および各モデルに対する位相速度を示した。この結果を以下にまとめるが、基本的に前年度の解析結果とほぼ一致している。
・ 反射法のB層およびC層に対応すると考えられる層として速度約600m/sec層が深度400〜500mまでに比較的安定的に推定されている。
・ D層に対応すると考えられる層も認められるが、その速度値と深度区間のばらつきは大きくなる。速度1500m/secを越えるような基盤と考えられる層の出現深度は600〜800m、その速度値は1700〜2900m/secと大きくばらついていることが分かる。
(2−1) 5層モデル
次に、探索範囲は8層の場合と同様に広くしたまま、層の数を5層にし、O−6のみで単独のインバージョンを行った。インバージョンの結果得られた速度構造モデルおよび各モデルに対する位相速度を図3−1−9−2に示す。この結果、以下のことが判る:
・ 深度500m以浅は2層に表現され、8層モデルに比べて、深度、速度ともにばらつきは殆ど無いことが分かる。500m以深については、基盤を含めて3層で表現されており、速度及び境界深度は若干ばらつくものの、8層のモデルに比べると収束はかなり改善されている。
・ 深度500m〜700m付近で推定結果が若干ばらつく原因としては、0.5Hz付近が近似できないためと考えられる。この周波数は、昨年度の解析結果および8層モデルでも近似されていないので、分散曲線そのものに問題がある可能性もある。反射法の結果と整合性を持たせるため、4層モデルによるインバージョンも行った(図3−1−9−3)が、深度500m以深の構造について特段の改善は認められない。
これらから、岡崎平野においては、インバージョン時の層の数が解の安定に非常に大きく影響することが確認された。また、O−6地点では、5層構造が最も安定した解が得られることが明らかになった。