さらに、図5−5−8に示した回帰式との差を求めることにより、観測地点間の相対的な走時遅れ分布を求めた。図5−5−10−1、図5−5−10−2にP波およびS波の走時遅れ分布を示す。上図が観測値、下図がモデルによる理論値を示す。観測値の走時遅れ分布ではX=‐40000m、Y=‐85000mからX=‐25000m、Y=‐10000mにかけて帯状に走時遅れが大きい領域が伸びているのに対し、理論値では特にS波よりP波の方でその傾向は見られない。特にP波の走時遅れ分布では観測と理論で差異が顕著に現れている。これは前述のとおり一律のP波速度とS波速度の関係を濃尾平野全域に対して用いていることが要因と考えられる。レシーバ関数を用いた検討においても述べたが、本来はP波速度とS波速度の関係に地域による違いがあることを念頭に置かなければならない。しかしながら現状では P波速度とS波速度の関係を一部の地域単独で設定できるほどデータは十分ではなく、それをカバーするために速度境界面を適切に設定することが重要である。
図5−5−8 理論走時と観測走時の比較
図5−5−9−1 P波の観測走時と理論走時の差の分布
図5−5−9−2 S波の観測走時と理論走時の差の分布
図5−5−10−1 P波走時遅れ
図5−5−10−2 S波走時遅れ