5−3−1 H/Vスペクトルに基づく修正

H/Vスペクトルでは、平野の北部の理論H/Vスペクトルのピーク周波数が観測によるH/Vスペクトルの卓越周波数より低く、名古屋市の南西部の理論H/Vスペクトルのピーク周波数が観測によるH/Vスペクトルの卓越周波数より高くなっている。これらの地域は、やや離れたところに反射法による探査測線が位置しているが、中新統や基盤に到達しているボーリングがなく、地質境界面の確実性が低いと考えられる。また微動アレイ探査は名古屋市南西部に関しては実施されているが、分散曲線が長周期まで十分に推定できておらず、特に深いところの深度の推定精度は低いと考えられる。

このため、観測記録と周波数が合わない地点に関して、H/Vスペクトルの1次ピーク周波数および1次ピークと2次のピークの間にあるトラフの周波数が合うように、反射法による推定深度から大きな食い違いが生じないことを考慮しながら、平野北部では中新統や基盤の境界面深度を浅く、名古屋市南西部では中新統や基盤の境界面深度を深く修正した。図5−3−1に各修正地点の修正前後の地盤モデルと理論H/Vスペクトルを示した。修正により、理論H/Vスペクトルの1次ピーク周波数およびトラフの周波数が、観測によるH/Vスペクトルの1次ピーク周波数、トラフの周波数と対応し、修正した地盤モデルにより観測によるH/Vスペクトルの全体的な形状が説明できていることがわかる。

図5−3−1 各修正地点の修正前後の地盤モデルとH/Vスペクトル