(1)名古屋地域の深部地盤構造I、II (国土庁、1981、1982)

この調査は、広域での深部構造探査を目的としたもので、濃尾平野に関連する範囲では、平野南端の鍋田発破点を中心に、四日市方面、鈴鹿山地方面と平野北部方面、そして愛知県東南部の田原方面への4測線が設けられていた。このうち鍋田−田原測線のほかは鍋田を発破点とする片測線となっている。3つの片測線によれば、平野南端の鍋田から伊勢湾を経て鈴鹿山地に向かって次第に浅くなる状況、濃尾平野の北に向かって地層が次第に浅くなっていく状況がそれぞれ示されている。(図3−4−2:四日市へ向かう測線の結果は省略されている) これらの傾向は後述の地層、速度層分布の作成の際に参考とした。

鍋田から田原に向かう測線については、深い構造の探査を目的としているために観測点の間隔が数kmと長く、浅い地盤に対する精度は粗いが、鍋田と田原の測線両端で発破されており、この走時のデータを再解析することができた。再解析の結果を図3−4−3に示す。

速度層の構成は、既往の結果では、Vp=5.0km/s、3.0km/s、1.9−2.5km/s とされていたが、再解析ではこの構成とは異なり、濃尾平野の南端部で地震基盤層としてのVp=5.5km/s層の深度がおよそ2000m、その上部にはVp=3.1km/s層が層厚1000m以上そして、Vp=2.3km/s層が約500m以上の層厚となっている。また濃尾平野を外れて東へ行くと各層厚は次第に薄くなり、Vp=3.1km/s層の下部にVp=4.0km/s層が現れてくる。この層は濃尾平野には出現しない中新統あるいは花崗岩の一部と推定される。

図3−4−2 既往の地震探査測線・結果概要(愛知県(1993)による)

図3−4−3 屈折法探査結果の再解析例(鍋田−田原測線)