長距離屈折波データに対しタイムターム法の屈折波静補正の手法を適用することの問題点は、
屈折波が受振点鉛直方向から入射していると仮定しているため、真の構造はマイグレーションをする必要がある、
屈折面の傾斜に起因する異なる方向からの屈折波のみかけ速度差がきちんと考慮されていない、
ことである。しかし、調査地域の基盤岩上面の構造はほぼ単傾斜でその傾斜も比較的緩やかであることが反射法の結果からも分かっているため、上記の影響は小さいと考えられる。ただし、構造変化や測線の屈曲等激しい区間では、これらの影響は無視できなくなる。例えば、養老断層の西側を通った波線の影響が現れるLoc. No.1001から1276を用いてインバージョンを行うと、2層構造の仮定から大きく離れるために、安定した解を導くことが出来なかった。また、測線の東端は、測線が北上しており、東西方向から大きく逸脱している。したがって、タイムターム法にによる解析には、Loc.No.81−1025間のデータのみを用いた。表層(堆積層)の速度は、P波反射法地震探査から求まる重合速度をもとに推定した。
この手法から求められた基盤岩速度は、およそ5.5km/sであり、測線の東端で速度が約5km/sを示す部分(Loc.200付近)があるものの、調査測線全体で大きな変化はない。基盤岩上面の構造としても、反射法地震探査のマイグレーション深度断面図(図2−2−15)とよく一致している。