以上は浅部での直接的なP波およびS波の速度測定結果であるが、濃尾平野周辺で中・深部を対象として実施された速度検層やVSPは、名古屋市中川区山王の温泉ボーリングでの山口ほか(1999)による結果と岐阜県羽島市下中町に掘削された防災科学技術研究所の高感度地震観測井での結果(未公表)があるのみである。山王は、基盤を花崗岩とし、地表から深度100m程度までは第四紀の熱田層、海部・弥富累層、これ以深は新第三紀の東海層群が続くが、中新統の存在については明確ではない。速度測定結果(図2−1−15)では、基盤のP波及びS波速度はそれぞれ5.4km/s、2.8km/sを、堆積層はそれぞれ1.9km/s〜2.3km/s、0.4km/s〜0.8km/sを示し、基盤直上には薄い砂礫層があり、それぞれ3.2km/s、1.3km/sとやや速い速度を示している。