(4)分散曲線

SアレーおよびMアレーでは、良好な空間自己相関係数が得られたため、地震計間距離ごとに求められる分散曲線もきれいに重なっており、大きな誤差は見られない。

Lアレーでは、長周期側で位相速度にばらつきが見られる。地震計間距離が広がるほどばらつきが大きくなる傾向が強い。調査地点別に見ると、豊橋平野(東三河平野)の調査地点(Tナンバー)よりも、岡崎平野(西三河平野)の調査地点(Oナンバー)でばらつきの度合いが大きい。

SアレーとMアレー、MアレーとLアレーで重複する周期範囲で、それぞれで求められた位相速度はほぼ同じ値となっており、結果の信頼性は高いものと判断される。

すべての地震計間距離による分散曲線を統合して調査地点ごとにまとめたものが、図4−4−4に示す観測分散曲線である。統合にあたって、ばらつきの小さい周期範囲ではそれぞれの位相速度を平均し、Lアレーの長周期部分は地震計間距離の短いデータに重みをおいて観測分散曲線を決定した。

図4−4−4を見ると、O−2,T−1,T−2,T−3の分散曲線は1秒前後で急激に位相速度が上昇しており、基盤深度が浅いことが想定される。逆にO−6,O−7では、3秒以上の長周期でも位相速度がほぼ一定にならず、基盤深度が他の調査地点より深いことが予想される。

O−8およびT−4地点は、Sアレーのみの観測であり、長周期の位相速度は求められていない。図4−4−5は、O−8およびT−4の観測分散曲線に、O−6およびT−2地点の観測分散曲線の一部を合わせて表示したものである。短周期部分だけではあるが、T−2とよく似ており、O−6とは明らかに異なることがわかる。

図4−4−5 O−8・T−4地点の観測分散曲線

位相速度解析結果を以下にまとめる。

・全般に微動のパワーが小さい。

・したがって、長周期域で個別に解析した位相速度にばらつきがみられる。

・その傾向は、豊橋平野より岡崎平野の方が強い。

・O−6,O−7地点は、分散曲線が平坦になるまでの長周期の位相速度が得られていない。

・O−8,T−4地点は、Sアレーのみの観測であり、長周期の位相速度は得られていない。