地表面で観測される微動は、実体波も含まれるが、表面波が主体となっていると考えられる。表面波には幅広い周期(周波数)帯域の波が含まれており、周期によって伝播速度が異なる『分散』と呼ばれる特性を持っている。それぞれの周期における表面波の伝播速度を、『位相速度』という。各周期の位相速度値(これを順番に並べたものを分散曲線と呼ぶ)は、地盤のS波速度構造によってほぼ決定される。また、水平多層構造モデルに各層のS波速度を与えることにより、分散曲線を理論的に求めることができる。微動アレー探査は、調査地点における分散曲線を求めることにより、地盤のS波速度構造を推定する探査手法である。
表面波にはレーリー波とラヴ波とがあるが、微動アレー探査では微動の上下動成分を観測しレーリー波の分散を求めるのが一般的であり、本調査もこの方法を採用した。
表面波の分散曲線を求めるためには、地震計を面的に複数配置した(アレー配置)観測網で、同時に微動を観測する必要がある。これによって求められる分散は、地震計を配置した調査地域(以下、この地域を微動アレー探査の調査地点と呼ぶ)近傍の、平均的なS波速度構造を反映したものとなる。したがってこの分散曲線から推定されるS波速度構造も、調査地点近傍の平均的なものとなる。
微動アレー探査は、次の3つの手順に分けることができる。
@微動を観測する。
地震計を地表面にアレー配置し、各観測点での微動を同時観測する。
A調査地点の分散曲線を求める。
それぞれの周期成分の、観測点間の相関性により、分散曲線を求める。
(以下、この分散曲線を『観測分散曲線』と呼ぶ。)
BS波速度構造を推定する。
水平多層構造モデルから理論的に求められる分散曲線(以下、これを『理論分散曲線』と呼ぶ)が、Aの観測分散曲線とほぼ一致するモデルを、逆解析により求める。