(1)データ取得作業

P波反射法の測線東側では都市部であるため道路は舗装されており、受振器は極力植込みや道路横の露出地面に設置したが、利用できない場合はアスファルト上にアルミ製受振器スタンドを使用して設置した。受振点位置が交差点や三叉路の中にあたる場合は、正規間隔で設置せず受振点位置を近くの歩道側にずらした。また、交差点・三叉路付近、停留所・商店出入り口等で歩行の邪魔となるところでは、受振器を固めて隣接して設置する「バンチング」を併用した。

調査測線と交差する道路が多数あり、特に交通量の多い幹線道路での本線ケーブルの道路横断には、信号柱を用い高架渡しを行った。高架渡しを行ったのは41ヶ所である。この他の交差点では、道路地下の水路等を通すか、ケーブルをゴム製のカバーで覆などして道路面を横断させた。

発振作業に当たっては、発振点毎の騒音・振動の様子を確認しながら、適宜

  ・スイープ数

  ・出力レベル

  ・バイブレータ車の台数

の調整等を行った。

原則として名古屋市内は2台、その他の地域は3台稼働、10回スタック/点を基準としたが、各発振点の状況に応じ臨機応変に対処した。バイブレータ発振出力についても状況に応じ、最大出力の40〜90%に変えて行った。また、現地状況の許す限りスタック回数およびバイブレータ発振出力を上げ記録の質の向上に努めた。

現地調査の作業状況については、付録1の現場写真集を参照されたい。

図2−1−4にP波反射法の現場記録例を示した。(図2−1−4−1図2−1−4−2図2−1−4−3図2−1−4−4図2−1−4−5図2−1−4−6図2−1−4−7図2−1−4−8図2−1−4−9図2−1−4−10図2−1−4−11図2−1−4−12)各図は、1発振点に対して、地表の240から380受振点で観測した記録であり、横軸は受振点の番号、縦軸は時間となっている。参考のために各図の上部に測線図も同時に添付した。本調査においては、佐屋町内など事情により受震測線近傍で発振できないケースがあった。そのような場合には、受振点と発振点位置が異なることになり、受振点の近傍で発振した場合と区別するために発振点番号に3000番台の独立の番号をつけて発振点番号とした (例えば図2−1−4−9および図2−1−4−10)。これらの記録から以下のことが言える。

測線の東側は名古屋市中心部であり、交通量が多く、記録の質の低下が予想された。名古屋市千種区から中区にかけては、若宮大通り上での発振となり、道幅が広く、人家から離れた中央分離帯よりで長時間の発振が可能であった。この部分は、基盤深度も比較的浅い(約600m)ことから、重合数を20回程度確保すれば、基盤からの反射が明瞭であった。基盤より浅い部分の反射波は、埋設管によるノイズ(チューブ波)の影響もあり一般に不明瞭である(図2−1−4−1図2−1−4−2図2−1−4−3図2−1−4−4)。中村区にはいると、道幅が狭く、人家が密集してくるため、十分な発振エネルギーを確保する事が困難となり、記録の質が低下し、基盤反射も不明瞭になる(図2−1−4−5)。七宝町、蟹江町に入ると、ノイズが少なくなり、予想される基盤深度も1kmを越えるものの、基盤反射波が明瞭である(図2−1−4−7図2−1−4−8)。また、佐屋町内は、埋設管を避ける目的で、殆どの発振点を受振測線から移動させたオフセット発振となったが、往復走時1.2秒を超える基盤反射が確認できる(図2−1−4−9図2−1−4−10)。三重県多度町内になると、ノイズは少なく、往復走時0.9秒以浅に基盤反射波と思われるイベントが得られている。非対称な反射パターンや基盤深度の変化は、基盤構造の大きな変化を示唆している(図2−1−4−11図2−1−4−12)。

反射法データ取得作業の結果、次の成果物が得られた。

(1)現場磁気テープ(1/2in.2400ft., SEGYフォーマット) 18巻

(2)同上データシート(Observers Report) 1式

(3)現場モニター記録 1式

(4)発振点・受振点座標/標高値 1式