・平成11、12年度の調査結果によって濃尾平野の概略的な基盤構造が明らかになった。しかしながら、データ密度が未だ十分ではない。特に、基盤深度が極めて深くなっていると予想される平野南部での3次元地下構造モデルの精度は十分とは言えない.濃尾平野南部は、基盤を構成する美濃帯と領家帯の境界付近にあたること、名古屋市内においてブーゲー重力異常値が大きく変化すること、伊勢湾内で認められ陸域近傍まで続いている伊勢湾断層の存在等、地下構造が大きく変化する可能性がある.したがって、従来の地下構造調査に加えて、新たに平野南部を東西に横断する地下構造調査を実施し、平野南部域の3次元的な地下構造把握の高精度化を図る必要があろう。
・基盤深度が深くなり、堆積層が厚くなると予想される濃尾平野西部および南部地域においては、各層(特に東海層群および中新統)の境界深度や速度情報が得られていないため、解釈結果に不確定要素が残っている。この問題を解決するためにも、基盤深度1500m以上で、堆積層(東海層群、中新統)が厚く堆積していると予想される平野西部・南部地域においては、既存坑井などを利用して、堆積層の層厚、VpおよびVsを直接確認することが必要である。これらの結果如何によっては、今回の調査結果は特に濃尾平野南部で変わる可能性がある。
・微動アレイについては、基盤深度が比較的浅い(〜2000m)濃尾平野においては、比較的上手く推定されたと言える。しかしながら、離散点で得られたデータを独立に解析しているため、観測点間でのばらつきが大きく、反射法の結果とも整合しにくい。このため、広域の速度構造の推定に適用するには問題が多い。これらの点を克服するために、現場作業方法も含めた解析方法の検討が必要である。
・既存データを用いた基盤構造の推定では、コントロールポイントの少ない名古屋市南部などにおいて、重力異常にやや反する結果が得られた。このような地点で信頼性のある情報を得られるような調査を引き続き行っていくことは重要である。また、このような地域でも、基盤深度に関する情報が全くない場合は少なく、例えば基盤深度1600m以下などの情報なら得られる場合も考えられる。このような情報を拘束条件として、深度コンターを描く方法の検討も重要である。
・弥富町で得られたS波反射法では、調査地点や調査時間を工夫し、深度1500mまでの基盤からの反射波が得られた。しかしながら、基盤付近のS/Nは十分ではない。S波震源エネルギーの増強、変換波の積極的な利用などS波のS/Nを向上させる工夫が引き続き必要である。
・将来的には得られた地下構造モデルを用いて地震動シミュレーションを実施し、断層や盆地構造などの構造変化による影響について検討をするとともに、地震工学に応用する場合に地下構造に要求される精度および分解能を把握する必要がある。そのためには、強震動データの収集・整理が引き続き必要である。