(1)清洲観測井の諸データとの比較

NP12は清洲観測井近辺(清洲観測井と微動アレイの観測中心との位置関係は図2−5−2に示すように約700m程度のオフセットがある)に位置している。図3−2−15−1図3−2−15−2に微動から推定されたS波速度構造を、観測井でのVSP結果と、観測井近辺のP波反射法により得られたP波速度を坑井速度測定結果から推定したVp−Vs関係(Vs≧300m/s)を用いて変換して求めたS波速度とともに示す。

微動結果とVSP結果を比較すると、堆積層中の大略的速度構造や基盤深度、さらに基盤速度についても比較的良く一致していると言える。唯一認められる顕著な相違は、東海層群(深度200m〜深度630m)の平均速度がVSPの速度に比べて約20%程度大きいことである。特に、深度200m〜400mの東海層群上部では約35%に達する。この違いの原因としては次のことが考えられる。

・既往の坑井データによれば東海層群中の礫層の水平変化はかなり大きい(図3−1−9)。もし、NP12地点の礫層の総層厚が小さければ、結果として微動結果がVSPに比べて大きな速度を示す。

・微動は水平方向に伝播する表面波に起因するものであり、水平方向のS波速度を推定している。一方、VSPは垂直方向に伝播するS波速度に対応している。もし、東海層群が異方性を有するならば、微動結果とVSPの速度に違いがでる。一般に、層構造を形成する場合水平方向のS波速度の方が大きな値を示し、今回の結果とも一致している。

本調査においては、この原因の特定化はできなかったが、これがもし異方性に起因するならば、当然探査手法によって得られるS波速度に違いがあることになり(例えば、微動や屈折法は水平方向の速度検出に、VSPや反射法は垂直方向の速度検出に適している)、S波速度モデルを構築する際の極めて重要な問題になってくると思われる。この原因について検討を進めるには、坑井データ等による東海層群中の礫層の分布状況の詳細を把握しつつオフセットVSPあるいは屈折法等による水平方向のS波速度の測定が今後必要であろう。また、同時に、地震動シミュレーションにおいて必要とされる速度の精度についての検討も加えて行く必要があろう。