3−1−5 深部反射法地震探査
図3−1−6に濃尾平野周辺において基盤までを対象として実施された深部反射法地震探査位置を示す。この内、三重県桑名市及び長島町の長良川河口部(水資源開発公団ほか, 1994)における南北測線(長良川と揖斐川の間の中堤沿いの約5km)においては、深度1700〜1800mで平坦ないしは南西方向に緩やかに傾斜している基盤上面が得られている。また、中新統と解釈された地層は基盤の凹凸を埋めるように堆積し、上位の東海層群と不整合を成しており、その層厚は200m程度である。平成9年度「尾張西部活断層調査」(愛知県, 1998)によれば、一宮市南部の約7kmの東西測線では基盤深度は東から西に深くなり、約500m〜850mを示し、木曽川町での約3kmの東西方向の測線では、同様に、約500m〜650mを示している。これらの測線は岐阜−一宮線の推定位置を横切ると考えられたが、これらの断面では基盤上面に凹凸は認められるものの、大きな上下方向の累積変位を示す断層は確認できなかった。須貝・杉山(1998)による海津町から南濃町に至る東西約7kmと木曾川沿いの南北約3kmの調査では基盤までの反射面が明瞭に捉えられている。東西測線では西縁の養老断層に向かって傾斜する傾動構造が発達することが確認され、養老断層が低角の逆断層であることが確かめられ、その前縁は揖斐川西岸に達することが確認された。基盤上面は東西測線東端で深度約1300mで西方に傾斜し、断層から約1.5km東で深度約2000mに達する。この結果は平成11年度P波反射法地震探査の結果と整合している。これ以西では反射面は存在するものの基盤上面の確認が難しい。浅部の堆積層の境界面の連続性は極めて良く、調査地近傍に推定されている大藪−津島線、大垣−今尾線の兆候は一切認められなかった。また、水資源開発公団ほか(1994)による伊勢湾内での調査結果からは、伊勢湾断層が全東西測線ではっきりと追跡できる。最も北側に位置する東西測線の基盤深度は伊勢湾断層の西側で約2300m、東側で約1400mを示している。基盤上面を含み中新統上面までは緩やかな西傾斜を示しているが、それ以浅はほとんど平坦である。中新統の層厚は500m程度である。また、各地層とも南北方向にはほぼ平坦である。このように、濃尾平野における深部を対象とした反射法地震探査はあまりなされておらず、広域の構造を推定するには不十分である。