濃尾平野の第四紀層を除く深部地質構造については十分解明されているとは言えないのが現状であるが、温泉ボーリング等の深層ボーリング資料等をもとに概略が推定されている。それによると、中古生層(美濃帯のチャートや砂岩・泥岩)や花崗岩(白亜紀後期に貫入)を基盤としてその上位を中新統(平野南西部で砂岩泥岩互層を主とし凝灰岩を伴う浅海成層として広域に分布(高田ほか, 1979))が覆い、東海湖形成時に堆積した東海層群及びそれに続く第四紀以降の地層(弥富累層、第三礫層、海部累層、第二礫層、熱田層、第一礫層、濃尾層、南陽層)が堆積している。これは濃尾傾動地塊とともに氷河性の海面変動により形成されたと推定されている(図3−1−2、表3−1−1)。
濃尾平野は西縁を養老断層系、南縁を天白河口断層に限られており、平野下には養老断層系に平行な伏在断層がボーリング資料から推定されている(図3−1−3)。これらの内、岐阜−一宮線、大藪−津島線、大垣−今尾線については、平成9年度に実施された「尾張西部地域活断層調査」(愛知県, 1998)の結果、いずれも累積性を持つ大きな上下変位が無いことが確認されている。これらの構造線を横切って行われた平成11年度に行われたP波反射法地震探査の結果においても、基盤上の堆積層に明瞭な不連続は認められなかった。また、養老断層系の南東延長方向には伊勢湾断層が、天白河口断層の南西延長方向には四日市−桑名断層系が存在する。