太平洋沖合などのプレート境界付近で発生する地震によって、地震動や津波による被害を受けることがある。例えば、1854年の安政東海地震(M8.4)や1944年の東南海地震(M7.9)では、県内の全域で強い地震動が生じ、名古屋市付近では大きな被害が生じた(詳細は6−2(1)参照)。また、津波も伴い、県内では、津波の高さは1〜2m程度になることもある。
愛知県の地形をみると、伊勢湾の東岸に沿って知多半島が延び、またその南東には渥美半島が西方に突き出している。伊勢湾の奥には濃尾平野が広がっているが、その東側では丘陵地を経て低い山地(美濃三河高原)になり、長野、静岡県との県境付近では木曽山脈や赤石山脈につながるような険しい地形となる。図6−69は、愛知県の地形と主要な活断層を示したものである。県中部をみると、活動度B級の猿投山断層帯が北東−南西方向に延びている。また、岐阜市から名古屋市にかけての地下に岐阜−一宮断層帯{96}という伏在断層が北西−南東方向に延びるとされている。岐阜−一宮断層帯{96}は、1891年の濃尾地震で濃尾断層帯とともに活動したと考えられている{90}。さらに、伊勢湾内に伊勢湾断層帯があることが知られている。県外の断層であるが、名古屋市の近郊では、岐阜県の養老山地の東麓から三重県の四日市にかけて活動度B級の養老−桑名−四日市断層帯がほぼ南北方向に延びている。この断層帯が1586年の天正地震(M7.8)の際に他の断層帯とともに活動した可能性{91}も指摘されている。なお、県南部には、地質構造上の大きな境界である中央構造線が東北東−西南西方向に延びるが、この付近のこの構造線が活断層である可能性は低い{92}と考えられている。
歴史の資料で知られている県内で発生した浅い被害地震としては、浜名湖の西、静岡県との県境付近で発生した715年のM6.5〜7、1686年のM6.5〜7の地震や西尾市付近で発生した1861年のM6.0の地震などが知られている。明治以降では、1945年の三河地震(M6.8)があり、幡豆郡を中心に死者2,306名、全壊家屋7,221などの大きな被害{93}が生じた。この地震により深溝断層で地表にずれが生じた{94}。この断層は、C級の逆断層であり、断層の上盤側で被害が特に大きかった。
周辺地域で発生した地震によっても被害を受けることもある。例えば、歴史の資料によると、1586年の天正地震(M7.8)、1715年の大垣付近のM6.5〜7の地震などで県内に被害が知られており、明治以降では、濃尾地震(M8.0)により県内の広い範囲で震度6が観測され、甚大な被害が生じた(詳細は6−2(2)参照)。なお、県東部の新城市は「東海地震」で被害が予想され、地震防災対策強化地域に指定されている(詳細は6−3(8)参照)。
さらに、1960年のチリ地震津波のように外国の地震によっても津波の被害を受けることがある。
なお、愛知県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図6−70に示す。
表6−9 愛知県に被害を及ぼした主な地震