(1)太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震

フィリピン海プレートは、駿河湾および中部地方の太平洋側沖合にある駿河トラフと南海トラフから、中部地方の下へ沈み込んでいる(図6−3)。また、太平洋プレートは、関東地方東方沖合の日本海溝から、中部地方の下へ沈み込んでいる(図6−4)。

 太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震は、フィリピン海プレートの沈み込みにより発生するプレート間地震とフィリピン海プレートの内部で発生する地震に分けられる。

1)フィリピン海プレートの沈み込みによるプレート間地震

 フィリピン海プレートの沈み込みによるプレート間地震としては、駿河トラフや南海トラフ沿いの巨大地震がある。

 このタイプの地震は、中部地方を含む広範囲にわたる地震動による被害とともに、房総、伊豆半島から九州に至る太平洋沿岸に津波による被害をもたらす。特に、紀伊半島沖から東海地方の沖合を震源域とした場合には、中部地方に大きな被害をもたらす。また、1707年の宝永地震(M8.4)のように駿河湾周辺から四国西部までの広い範囲を震源域{4}とする巨大地震が発生することもあり、この場合には中部地方の広い範囲にわたって著しい被害が生じる。駿河トラフから南海トラフにかけては、過去にこのような地震が繰り返し起こっており、歴史の資料に数多くの地震の記録が残っている。このタイプの地震の繰り返しなどについては、8−1(1)でより詳しく説明している。

 なお、その発生が懸念されている、いわゆる「東海地震」もこのタイプの地震であり、想定される震源域は駿河トラフに沿った地域(駿河トラフの西側)に限られる。東海地方では、駿河湾西岸の沈降など、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地殻変動が認められている(図6−7)。

2)沈み込むプレート内の地震

 中部地方の下に沈み込む太平洋プレートやフィリピン海プレートの内部においても地震が発生しているが、これらは深い地震であり、中部地方に大きな被害をもたらすことはないと考えられる。ただし、奈良県中部、深さ約60kmで発生した1952年の吉野地震(M6.8)は、沈み込むフィリピン海プレート内の地震であり、中部地方では愛知、岐阜、石川の各県で小被害が生じた。また、1997年3月の愛知県東部の地震(M5.8)も沈み込んだフィリピン海プレート内の地震であり、豊橋市で震度5強が観測された。