栃木県の地形を見ると、県の北部には南会津から続く山地や那須岳があり、その麓には那須野原が広がっている。日光以南には足尾山地、また県東部には、八溝山地があり、その間には関東平野が南から延びてきている。県内の主要な活断層は、県北部の那須野原と南会津・奥日光の山地との境に、活動度A級の逆断層である関谷断層が南北方向に延びている。図5−38は、栃木県の地形と主要な活断層を示したものである。
歴史の資料によって知られている被害地震としては、1683年に日光付近で発生したいくつかの地震がある。1683年は4月頃から日光付近で群発性の地震が続き、6月17日(M6〜6.5)、6月18日(M6.5〜7)、10月20日(M7.0)に規模の大きな地震が発生した。日光付近を中心に被害が生じ、10月20日の地震では、五十里村で生じた山崩れが川を塞いだために湖が生じた。{35}これらの地震は、関谷断層で発生した可能性が指摘されている。{36}日光付近では、その後も1725年(M6)や規模不明ながら1735年、1746年、1755年などに被害地震が発生した。また、福島県との県境付近で発生したと考えられる1659年の岩代・下野の地震(M6 3/4〜7.0)では、県北部を中心に被害が生じた。
明治以降では、1949年の今市地震がよく知られている。この地震では、ほぼ同程度の規模の地震(M6.2とM6.4)が8分の間隔をおいて続けて発生した。この地震によって、今市市付近では震度6相当の揺れが生じ、県内で死者10名などの被害が生じた。{37}また、この地震の数日あるいは数ヶ月前から地鳴りがあったことが報告された。
日光・足尾地域から群馬県との県境にかけての地域では、定常的に地震活動が見られ、関東地方の陸域の浅いところに見られる地震活動の中で最も活発である。この地域には火山がいくつかあるが、これらの火山と地震活動との関係について、はっきりしたことはまだ分かっていない。
また、周辺地域で発生する地震や相模湾から房総半島南東沖にかけてのプレート境界付近で発生する地震によっても被害を受けることがある。例えば、1923年の関東地震(M7.9)では、県内で負傷者3名などの被害が生じた。{38}また、最近では、1996年の茨城県南部の地震(M5.4)によって、今市市などで若干の被害が生じた。
なお、栃木県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図5−39に示す。
表5−3 栃木県に被害を及ぼした主な地震