(2)関東地方東方沖合のプレート境界付近で発生する地震

太平洋プレートは、関東東方沖合を南北方向に延びる日本海溝や伊豆・小笠原海溝から、関東地方の下に沈み込んでいる(図5−5)。

 関東地方東方沖合のプレート境界付近で発生する地震は、沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートがその境界でずれ動くことにより発生するプレート間地震と、沈み込む太平洋プレートの内部で発生する地震に分けられる。

 また、太平洋プレートの沈み込みに関係する地震は、関東地方の陸域の深いところでも発生しており、それについては、5−1(3)で説明する。

1)太平洋プレートの沈み込みによるプレート間地震

 関東地方東方沖合から福島県沖にかけて発生した太平洋プレートの沈み込みによるプレート間地震としては、明治以降では、1909年(M7.5)と1916年(M7.0)の房総半島南東沖の地震、1938年の福島県東方沖地震(M7.5)などが知られている。このタイプの地震は海底下の比較的浅いところで発生することが多く、その断層運動による海底での地殻変動(隆起や沈降)で、ほとんどの場合、津波を伴う。ただ、同じ太平洋プレートの沈み込みによる地震でも、三陸沖の日本海溝ではM8程度の巨大地震が時々発生するのに対し、福島・茨城県沖合以南ではM8程度の巨大地震は明治以降には発生していない。ただし、歴史の資料によると、震源域の詳細は分からないが、1677年にはM8程度の規模で房総半島東方沖に発生したと考えられる地震により、福島県から房総半島沿岸・八丈島にかけて津波によって大きな被害が生じたことがある。関東地方東方沖合で、歴史の資料により知られている被害地震はこの地震だけである。なお、これより南方の伊豆・小笠原海溝に沿っては、1972年の八丈島東方沖地震(M7.2)などM7程度の大地震の発生は知られているものの、M8程度の巨大地震の発生は知られていない。

2)沈み込む太平洋プレート内の地震

 被害地震としては、1953年の房総沖地震(M7.4)が知られている。この地震は、「海溝三重点」と呼ばれる日本海溝と伊豆・小笠原海溝そして相模トラフが会する付近で発生した浅い正断層型{4}の地震と考えられており、津波を伴った。このような型の地震はあまり多く知られていないが、1)でプレート間地震とした古い地震の中には、そのメカニズムが必ずしも明らかでないものがあり、沈み込むプレート内の地震が含まれている可能性がある。