7−6 要約

曽我原トレンチ調査によって国府津−松田断層の最新活動時期はAD1100年〜AD1350年頃と考えられる。1つ前の活動時期は、明確に層準を絞りきれないが、H2相以降D層以前(BC800〜AD130)と推定される。したがって、活動間隔は970〜2150年となる。最新活動による鉛直方向の変位量は、断層を挟んで対比できる地層が認められないので、精度は落ちるが低断層崖の比高である約1.6mを採用する。しかし、断層変位を2回受けているH層上面の高度差は約3.3mであるので、1.6mは妥当な値と思われる。

国府津−松田断層の鉛直平均変位速度は海成の沼面の変位量とHk−Tpflの変位量から約3mm/yと言われている(松島,1982,山崎・水野,1999)。平均活動間隔を970〜2150年とすれば、国府津−松田断層全体の鉛直単位変位量は約3.0〜6.5mとなる。これは曽我原トレンチで求められた単位変位量の約2〜4倍の値になる。撓曲変形を十分に考慮すれば、トレンチ地点近傍で求められた値はもっと大きくなると考えられるが、山麓の断層(大磯丘陵側)、あるいはその他の同系列の断層が同時に活動した可能性もある。

高田トレンチは千代台地の西縁の崖で掘削・調査されたが、明瞭な断層構造は確認できなかった。

大磯丘陵の完新世海成段丘群は国府津−松田断層の活動によって段丘化した可能性が指摘されていた。本調査ではこれら3段の海成段丘の年代を高位から約6000年前、約3000年前、約1000年前と推定できた。しかし、上述のように国府津−松田断層の活動間隔は970〜2150年と考えられ、海成段丘の段丘化間隔のほうが少し長いようにも見える。大磯丘陵における完新世海成段丘群の成因についてはさらに検討が必要である。