6−3 押切面の調査結果

押切面は最も低位の段丘面で、太田ほか(1982)は押切面を構成する砂礫層を覆う土壌から1020±160y.B.P.(未補正)の14C 年代を報告している。また、松田(1985)は押切面の上に鎌倉時代の寺や墓があり、段丘化年代はそれより前としている。関東第四紀研究会(1987)は押切面の年代を5世紀頃〜室町時代頃としている。

本調査では、大磯丘陵の海岸に沿う押切面のうち、人工改変、宅地造成から免れているみかん畑内でピット調査を行った(O−3:図6−1)。写真および模式柱状図を図6−3に示す。

調査の結果、地表面から約60cmが表土(盛土)で、その下位に層厚約20cmの礫層がみられる。淘汰が悪い円〜亜角礫からなること、本地点が大磯丘陵から流下する沢の出口付近に位置することから、この礫層は河成堆積物と思われる。礫層中には腐植質シルトが挟在し、その補正14C年代は990±90y.B.P.であった。最下位には比較的しまった分級のよい砂層がみられ、平行層理が認められる。また、一部に円礫が認められる。この砂層は海成砂層と考えられる。本地点ではテフラに関するデータは得られなかった。

以上から押切面の段丘化年代は1000年前頃と推定される。