5−3 高田トレンチおよびボーリングの解釈

トレンチおよびボーリング調査結果を含めた高田地点の断面図を図5−7に示す。

珪藻分析の結果、Ta層、U層(山北火山砂・御殿場泥流)、V層は沼沢湿地の環境を示し、Tb層は汽水種を伴う河川性のものであった(図5−6)。本トレンチでみられる沖積層の堆積環境は、海水の影響をほとんど受けない陸域の河川あるいは沼沢湿地で堆積したものと考えられる。一部で汽水種が認められたが、指標種群珪藻化石ではなく、汽水域に堆積したと断定できない。

Tb層、U層(山北火山砂・御殿場泥流相当層)、V層の層厚は、それぞれ東側に向かって薄くなり、アバット状の構造を示す。

X層(火山灰層)およびY層(箱根東京軽石流堆積物)の上限は西側に傾斜しているが、顕著な不連続は認められない。

V層より上位の地層はトレンチ東縁(丘陵側)付近で傾斜が急になるが、X層(火山灰層)およびY層(箱根東京軽石流堆積物)の上面の傾斜と不調和である。なお、約20°西傾斜するシルト層(V層)の試料(K8、K9)からも沼沢湿地を示す珪藻化石が産出し、本来、緩傾斜で堆積したシルトが変形を受けた可能性も考えられる。

高田トレンチは空中写真判読によって抽出された低崖を横断して掘削されたが、断層は確認できなかった。この低崖は、西傾斜するT層、U層が作った緩傾斜面に由来する地形であり、明瞭な断層構造は確認できなかった。

高田トレンチ付近でY層(箱根東京軽石流堆積物)の上面が西傾斜している点に関しては、東側(丘陵側)の箱根東京軽石流堆積物からなる台地面が東傾斜していることを考慮すると、背斜状の変形構造の一部である可能性も考えられるが、現時点では侵食に由来するものか、変形によるものか判断はできない。