4−5−1 最新活動時期

トレンチ中央部では、北傾斜の2条の断層(断層N、断層S)が確認された。断層NはH層からF層までを切り、B層(B1相)に覆われる。断層SはH層からC層までを切り、B層(B2相)に覆われる。また、C−D層は考古学遺物と14C暦年較正年代からC層、D層と堆積時期がほぼ同じであり、断層運動によるブルドージングによって変形した地層と考えられる。したがって、最新活動はC層より新しく、B層より古い。14C暦年較正年代に従えば、AD650年〜AD 990年(C層)より新しく、AD430〜AD 1010年(B2相)より古いことになる。一方、これらの地層から出土した考古学遺物の年代に従えば、平安時代末の12世紀後半(C層)より新しく、13世紀中葉〜14世紀前葉((B1相)より古いことになる(図4−10表4−2)。

このように14C暦年較正年代が考古遺物、古文書などによる歴史年代より100年〜400年程度古くなる例は、桜島火山の噴出物でも知られている(奥野,1997)。桜島の場合、AD1471年(古文書による文明の噴火)の火山灰に対応する3つの土壌の14C暦年較正年代は、@AD1282−1313、1334−1394、AAD1275−1310、1335−1393、B1032−1171であり、いずれもAD1471年より古く、歴史年代と14C暦年較正年代とのずれの範囲は439年〜77年である。

一方、曽我原トレンチのB1相、C−D層、C層から、6つの考古遺物が出土している。これらは各地層が連続して堆積する地点から出土しており、上位の地層から混入したとは考えにくい。以上から、曽我原地点の最新活動時期として14C暦年較正年代よりも考古学的年代を採用する。この場合、最新活動時期はAD1100年〜AD1350年頃となる。