・実測地震データの初動走時解析結果から得られた表層補正後の走時差分布を見ると、西北西から東南東に向かうトレンドを有する地下構造が推定される(図3−6−1−1、図3−6−1−2、図3−6−1−3、図3−6−2−1、図3−6−2−2、図3−6−2−3、図3−6−3−1、図3−6−3−2、図3−6−3−3、図3−6−4参照)。この走時差分布は、既往重力データの解析結果から得られた重力異常の高低の分布パターンとも調和的である(図3−8−1、図3−8−2、図3−8−3、図3−8−4参照)。
・P波とS波の地震波の走時差(それぞれ約0.3秒と1.0秒)から推定すると、少なくとも地下浅層部の地震波速度の遅い地層(三浦層群以浅)の層厚に西北西〜東南東に向かう傾向を持った変化があると推定される。
・川崎市が実施したバイブロサイス反射法探査結果(図3−10参照)を見ると、横浜市域に対応する部分でA層の層厚が、測線北側端(断面右側)に向けて厚くなり、最大で約200m程度の違いとなっていることが分かる。これを走時差に直すと0.1秒強程度となる。一方、測線沿いの実測走時差の最大値は約0.3秒である(図3−6−1−1、図3−6−1−2、図3−6−1−3、図3−6−2−1、図3−6−2−2、図3−6−2−3、図3−6−3−1、図3−6−3−2、図3−6−3−3、図3−6−4参照)。上記の通り、観測された走時差は三浦層群以浅の地層の厚さに変化があることを示唆しているので、報告された反射法探査の解釈結果では、観測された走時差を完全には説明ができない。
深部に推定されている段差構造については、その走向は今回検出された走時異常のトレンドと対応するが、走時差の現れるセンスが逆となっている。ただ、この段差構造は、Vpが4.8km/s層と5.5km/s層の境界深度の段差であり、その深度は今回の走時異常の原因と推定される深度よりもより深い部分の構造と推定されていること、また、段差から期待される走時差は最大でも0.1秒弱程度と小さいため、数値実験の結果からも分かるように、速度が2.8km/s以下の層の層厚の変化による走時差にマスクされてしまうため、今回の結果から、段差構造の有無について議論することは困難と思われる。