1−6−1 解析結果に関して

平成9年5月に本格的に稼働を開始した市内150箇所の強震計ネットワークで記録された自然地震の地震波形記録を利用して、横浜市の地下数10m〜数kmの上総層群のP波およびS波の速度構造を求めた。

横浜市の強震計ネットワークで、今年度観測された震度2以上の地震で解析に有効な地震は4地震であった。 これらの地震についてP波およびS波の初動を解析して、市域における場所的(平面的)な初動到達時間(走時)の差を求めたところ、西北西−東南東の方向を持つ走時異常パターンが認められた。この走時異常は、震源の異なる地震においても、またP波、S波の違いにかかわらず、普遍的に認められた。市域を大きく北部、中部、南部と分けると、北部と南部に走時差が大きい(走時の遅れが大きい)部分が存在し、中部には走時差の小さい(走時の遅れが小さい)部分が存在することが分かった。

P波では、走時差の最大と最小の差は約0.3秒であり、S波では約1.0秒であり、S波の走時差は、P波の走時差の3倍程度であることがわかった。

西北西−東南東の方向を持つ地震波の到達時間差の異常は、重力探査データの解析結果(波長数km程度のローカットフィルターをかけた結果)から求められた重力異常の分布と非常に良く一致しており、地震波速度の低速度異常が認められた部分に、低重力異常が一致し、地震波速度の高速度異常が認められた部分に、高重力異常が一致した。