2−3−5 探査結果

「川崎市バイブロサイス反射法探査」において指摘された3ヶ所のアノマリー位置における浅層反射法弾性波探査結について以下に述べる。

 川崎市のバイブロサイス反射法探査の結果、約20kmの測線中3ヶ所にアノマリーが指摘された。本探査は、これらのアノマリーが立川断層の延長によるものであるか否かの検証を目的として実施された。各アノマリーの存在する地域名を測線名とした(三保測線、港北測線および中原街道測線)。十分なロングオフセットのデータを得るためにチャンネル数を118とし、ロータロングスイッチを用いず、固定展開で測定した。ただし、各ショットレコードの最大オフセットは450mを下回らないように展開を移動させている。

 結論としては、後述する通り、3測線とも重合断面中の各反射波はほぼ水平で連続性がよく、断層に起因したと推定される反射波の不連続や乱れは確認できなかった。

(1)三保測線

 図2−3−9に測線図を示す。測点No.0〜230では昼間は交通量が多く、質のよいデータを取得するために夜間に測定を行った。夜間においては3測線中最も車輌の通行が少なく、データの質は良好であった。

 図2−3−12に時間断面図を、図2−3−15に深度断面図を示す。全体に北に向かって緩く傾斜するほぼ水平な連続性の良い反射イベントが1.8秒付近まで認められる。ただし、1.2秒以深はその連続性がやや悪くなる。

 測点No.50〜200の受振器で取得されたモニター記録には地下の埋設物からの反射波と推定される強振幅のイベントが初動直下に認められたが、重合後の断面ではほとんど除去されている。

 断面中央付近を境に、浅部で反射パターンが異なる。測線中央付近以南は幹線道路であり、以北は非常に狭い道路(1車線)、農道または私道であることから、盛土等の地表付近の地質条件が異なっていることによる影響と推定される。

(2)港北測線

 図2−3−10に測線図を示す。3測線中最もノイズ(主に車輌通行による)の多い測線であることから、夜間に測定を行った。しかし、大型トラックなどの通行は深夜でも途絶えずデータの質は3測線中最も悪い。図2−3−13に時間断面図を、図2−3−16に深度断面図を示す。全体に反射イベントはほぼ水平で非常に断続的である。0.3秒,0.5秒,0.9秒,1.3秒及び1.5秒付近にやや強い反射イベントが認められる。

(3)中原街道測線

 図2−3−11に測線図を示す。港北測線同様非常に交通量の多い測線であるが、測点No.200〜250間及び測点No.0〜80(尻手−黒川道路との交差点付近)以外は比較的良好なデータが取得できた。図2−3−14に時間断面図を、図2−3−17に深度断面図を示す。全体にほぼ水平な反射イベントが2秒付近まで認められる。

 川崎市バイブロサイス反射法断面との対比図を図2−3−18に示す。本探査結果は、バイブロサイス反射法結果に比べ、高分解能な結果が得られていることがわかる。両結果中の顕著な反射波は良い一致を示していることがわかる。

 横浜市北部(青葉区)における浅層反射法弾性波探査結果について以下に述べる。

図2−3−18に測線図を示す。本探査は、立川断層が横浜市まで及んでいるか否か、及んでいる場合はその規模を把握することを目的として実施された。水平距離400〜3,000mは交通量の少ない住宅街であるが、水平距離0〜400m及び水平距離3,000〜4,125mは交通量の多い道路である。データの質は受振器が設置された場所の交通量に対応している。

探査の結果得られた時間断面図、マイグレーション時間断面図、深度断面図、マイグレーション深度断面図及びそのカラー断面図を図2−3−19図2−3−20図2−3−21図2−3−22図2−3−23に示す。水平距離3,000m付近を境に反射パターンが異なる。水平距離3,000m以西では1.5秒付近(深度1,600m)まで連続性の良いほぼ水平の反射イベントが認められるが、水平距離3,000m以東では、反射イベントは断続的である。これは、本測線の水平距離3,000m以西は静かな住宅街で、良好なデータが得られたのに対し、以東では交通量の多い道路沿いで、データの質が悪かったことによる。

ここで、西側で認められる顕著な反射波の東側への連続性を確認するために、測点No.1850m以降のデータに対し、上記処理では実行しなかった表層(風化層)補正を実施した。その結果得られた時間断面図、マイグレーション時間断面図、深度断面図、マイグレーション深度断面図及びそのカラー断面図を図2−3−24図2−3−25図2−3−26図2−3−27、図2−3−28に示す。上記の処理結果に比べ、それぞれの顕著な反射波の連続性が良くなっていることがわかる。これらの断面から判断する限り、本断面中に断層に起因したと推定される異常は認められない。