2−2−7 解析結果および検討

図2−2−33に既往重力データを用いた広域解析結果のうち短波長成分重力分布と立川断層位置とを示す。短形は、北東−南西方向25km,幅5kmの重力探査精査の範囲を示す。

図2−2−34は、重力探査精査で得られたオリジナルのブーゲー異常分布と立川断層位置を示すものである。南西から北東に向けて、約20mGal/10kmという非常に急な重力水平勾配で重力が減少し、そこから多摩川に向けて約10mGal増加するという傾向は、当然のことながら既往重力データとよく一致している。これらの傾向は、大局的には、関東平野全体にわたる大規模な盆地状の基盤構造を反映したものであると考えられる。関東平野あるいは関東地方の大局的な基盤構造については、

文献:関東平野の基盤構造,長谷川・駒澤(1990),地質ニュース

関東地方の重力基盤に見える断裂構造,駒澤・長谷川(1988),地質学論集

関東地方の重力・磁気異常の分布と特徴,中井ほか(1987),地学雑誌

で詳しく論じられている。

 これらの文献によると、横浜市付近の本重力探査精査地域においては、重力基盤深度(概ね先第三紀基盤に相当すると考えられる)は、2千数百mを超える値として求まっている。

 図2−2−35図2−2−36図2−2−37に、今回得られた重力探査精査の結果を示す。 また、図2−2−38図2−2−39図2−2−40図2−2−41図2−2−42には、南西−北東方向の重力断面を各波長成分毎に示す。

 以下に、各波長成分毎にその特徴を述べることにする。

(1)トレンド成分重力分布と立川断層(図2−2−35

 トレンド成分は、既往重力データ解析における長波長成分に相当する成分であり、南西側から北東側に向けて約18mGaL減少しており、立川断層の南東方向延長部を境に北東落ちの基盤構造を強く示唆している。

 この成分は主に、関東平野全体にわたる大局的な基盤構造(先第三紀基盤)を反映したものであると考えられる。

(2)長波長成分重力分布と立川断層(図2−2−36

 長波長成分は、広域重力解析結果のうちの短波長成分に概ね対応している成分である。実際、図2−2−33と重ね合わせてみると両者の重力分布パターンは非常によい一致をしている。このことは、立川断層から南東方向に延長して認められた高重力異常の尾根筋が追認されたことを示しているとともに、今回の重力探査精査によって、既往の重力データ解析結果では比較的単調であったコンターの分布パターンがより細かく把握されたことになる。

 一方、この高重力異常帯(あるいは、低重力異常帯)の原因となる地下構造実体が何であるか、について検討するために、バイブロサイス反射法地震探査の結果に基づいてモデル重力分布の計算を行った。その結果を、図2−2−42に示す。結論として、先第三紀基盤の密度を2.5g/c‰,その上位堆積層である三浦層群の密度を2.1g/c‰と地質学的に妥当な値を仮定して計算した場合に、実測重力分布と計算重力分布とは、振幅・波長のそうほうにおいてかなりよく一致する結果が得られた。

 全体として、重力探査精査の長波長成分重力分布は、バイブロサイス反射法地震探査により明らかとなった先第三紀基盤の(波長数kmから十数km程度,落差数百m程度の細かな)起伏によって概ね説明がつくことと結論できる。

 ただし、バイブロサイズ測線の南西端付近では、実測重力と計算重力との分布パターンが逆になっている点と三浦層群中の密度攪乱については、深部構造として検討の余地が残っている。

(3)短波長成分重力分布と立川断層(図2−2−37

 短波長成分は、概ね深度1000m程度以浅(主に上総層群)の密度構造異常を反映していると考えられる。

 図2−2−43に、短波長成分重力分布と地形あるいは綱島断層群との関係を示す。

 地形と重力分布とを比較してみると、概ね河川流域(沖積層分布域)で低重力異常、丘陵(段丘)地域で高重力異常を示している。ただし、南西端(図の左端)付近では、地形標高が高いにもかかわらず重力は低異常を示している。

 全体として、北ないしは北西から、南ないしは南東に向けて高重力異常あるいは低重力異常の帯が認められるが、これらが立川断層の運動と関係しているか否かについては、今回の重力探査精査だけからは結論できない。

 一方、綱島断層群との関係については、その走向と重力分布のコンターパターンとの関係との間に特に顕著な対応関係は認められない。