2−2−5 広域重力解析 

(1)既往重力データ

 既往重力データとしては、地質調査所より給与されたグリッドデータを用いた。図2−2−5に既往重力データの解析範囲を示す。解析範囲1は、東西93km,南北95km(グッリド間隔1km),解析範囲2は、東西54km,南北47km(グッリド間隔500m)の短形範囲である。

 図2−2−6は、国土地理院編集による数値地図(KS110−1)を補間して描いた解析範囲である。図2−2−7に、地質調査所より供与された既往重力データのコンターマップを示す。

(2)データ処理および解析

(解析範囲1)

 図2−2−8に、解析範囲1の活構造図を示す。図2−2−9は、地質調査所より供与されたグリッドデータ(グリッド間隔1km)より描いたオリジナルのブーゲ一異常図である。図2−2−10に、ブーゲー異常分布のフーリエスペクトルを振幅対数スペクトルとして示す。このフーリエスペクトルを分析することにより、各種フィルターテストを通じて最適なフィルター特性を決定する事になる。フィルターテストの例を図2−2−11図2−2−12に示す。

 フィルターテストの際には、主としてスペクトル(振幅対数スペクトル)の勾配の変化点の波数(波長)に着目して、最適なフィルター特性の候補者を数とおりピックアップし、それらの中から周辺の地質状況をもっともよく説明できるものを最適フィルター特性として採用した。今回の場合はケース2の特性を採用した。

 最適なフィルター処理後の長波長成分重力分布を図2−2−13に、短波長成分重力分布を図2−2−14に示す。長波長成分重力分布は、主に、関東平野全域にわたるような大規模な基盤構造に対応している成分と考えられ、その平均深度は2000m程度以深と推定される。短波長成分重力分布は、基盤の上位堆積層あるいは基盤面の細かな起伏などに対応する成分と考えられる。

(解析範囲2)

 図2−2−15に、解析範囲2の活構造図を示す。図2−2−16は、地質調査所より供与された500m間隔のグリッドデータから描いた解析範囲2のブーゲー異常分布である。解析範囲2のデータ処理は、グッリド間隔が1kmの解析範囲1の場合ではよく見えなかった細かな波長成分が、あるいは見えてくるか否かについて確認するために実施した。その結果を、図2−2−17(長波長成分),図2−2−18(短波長成分)に示す。これらの結果は、解析範囲1と特

に本質的な差はないといえる。

(結果)

 解析結果を図2−2−19および図2−2−20に示す。

 解析範囲1の長波長成分重力分布(図2−2−13)は、主に関東平野全域にわたるような大規模な基盤構造に対応している成分と考えられ、その平均深度は2000m程度以深と推定される。一方、短波長成分(図2−2−19)は、基盤の上位堆積層あるいは基盤面の細かな起伏などに対応すると考えられる成分である。短波長成分中には、伊勢原断層,国府津・松田断層などの確認されている活断層の位置と非常によく対応した高/低重力異常帯が顕著に認められる。立川断層についていえば、立川断層付近から南東方向の平野部・横浜市をとおり富津岬の北方に抜ける高/低重力異常帯の縞模様パターンが顕著に認められる。

 この立川断層の南東側延長部に対応した縞模様パターンは、鉛直微分の分布などと比較検討することにより、フィルター処理に伴ういわゆる偽像ではなく、実際の地下密度構造異常に起因するものであると判断される。