図2−1−1に地形解析図を示す。
地形の特徴より調査範囲を4つの地域に区分し、各地域の特徴を以下に述べる。
(1)調査地北西部地域(多摩川より北西の地域)
名栗断層,立川断層の認められる地域である。
東京都青梅市の丘陵地では、名栗断層沿いに斜面の遷緩線と急崖が連続し、さらに霞川(古霞湖の東北縁)を通って武蔵野台地に至るリニアメントが認められる。
東京都西多摩郡瑞穂町から武蔵村山市、立川市に至る範囲は、立川面は分布する地域である。立川断層は、立川面に不明瞭であるが段差地形を形成している。陸上自衛隊立川駐屯地では北西−南東方向のリニアメントが認められる。しかし、このリニアメントは立川市、国立市の青柳面や多摩川沿いの沖積低地ではほとんど認められない。
(2)東京都稲城市,神奈川県川崎市麻生区地域
この地域は、概ね丘陵地よりなり地形面はほとんど認められない。主に北東−南西方向,北西−南東方向の沢と、それらより樹枝状に延びる枝沢が発達し、その河岸部に立川面,武蔵野面,下末吉面を若干伴う。単一の地形面が広く分布しないために、地形面の段差等によるリニアメントの抽出は難しい。また近年、多摩ニュータウン等の大規模な宅地造成も行われており、リニアメントがあったとしても失われている可能性が高い。
(3)横浜市北部地域(横浜市青葉区、都筑区地域)
この地域は、台地に多摩面が形成されている。また、鶴見川,恩田川やその支流沿いに立川面,武蔵野面,下末吉面が狭い範囲ではあるが形成されている。横浜市都筑区、恩田川右岸側の多摩面に、北西−南東方向のリニアメントが数条認められる。このリニアメントは、長いのもでは5km程度の延長を有するが、不明瞭であり、北西側は同じ多摩面内で消滅し、南東側は鶴見川沿いの沖積低地内で消滅する。同方向の他のリニアメントは長さ1〜2km程度で、不明瞭であり、連続性に乏しい。
(4)横浜市港北区より南東側の地域
この地域の台地は主に下末吉面よりなる。横浜市北部地域で認められたリニアメントも、この地域まで延長するものは認められない。この地域では鶴見川の流下方向の変化が著しい。横浜市北部地域では、鶴見川は南南東方向に流れるが、都筑区佐江戸町で東方向に流れを変え、また、港北区大豆戸町で北方向に流れを変え、港北区大曽根で再び東方向に流れを変える。さらに鶴見区駒岡から下末吉付近で序々に南方向に流れを変えて、河口付近ではほぼ南方向に流れる。
調査地北西部の名栗断層,立川断層では、断層に対応するリニアメントが存在する。しかし、多摩川以南では、横浜市都筑区の多摩面上に不明瞭なリニアメントが認められるが、延長は短く、連続性もないので、断層を表すものか否かは疑問がある。
また、図2−1−2にローム層下限等高度曲線を示す。
図の標高34〜36mより西側は多摩Uローム層で、東側は下末吉ローム層にあたるため、両者の間には、急峻な傾斜が認められる。しかし、下末吉ローム層分布域内では、緩く東〜南東に傾斜しているが、急激な傾斜の変化や段差は認められない。
図2−1−3には鶴見川沿いの立川礫層上端面分布図を示す。これは、鶴見川沿いの既往ボーリングデータより、立川礫層上端部の標高を拾い、断面図上にプロットしたものである。
ボーリングの位置(右岸,左岸,河床)や河床よりの距離によりばらつきはあるが、概ね直線状の分布を示している。
これらの調査結果は第四紀層の連続を示すもので、活断層の存在を否定するものである。
(地表踏査(概査)結果)
図2−1−4に調査地周辺の地形面区分図を示す。
調査地北東部にあたる多摩川沿いの川崎市高津区及び中原区地域は、沖積層が分布し、標高20m前後の低地が広がる。この沖積層は泥からなる低湿地堆積物が広く分布し、旧河道沿い等に砂や礫よりなる自然堤防及び砂州堆積物が部分的に分布する。
高津区末長、千年付近より南西側では、標高60m前後の下末吉台地となる。両者の境界には急峻な斜面が形成されている。
下末吉台地は、有馬川,早淵川等の河川をその支流が樹枝状に発達している。この下末吉台地は、川崎市高津区,宮前区及び横浜市港北区にまたがる地域にあたる。
下末吉台地は、基盤岩として、上総層群の泥岩や砂岩が分布し、それを覆って主に泥や砂よりなる相模層群が分布する。相模層群の最上位には下末吉層及び下末吉ロームが分布する。
その西側は標高70〜80m前後の多摩丘陵へと変化する。多摩丘陵は、多摩川以西では川崎市多摩区〜横浜市都筑区にかけて認められ、調査範囲は多摩丘陵の南部に係る。
調査範囲の南東部には、鶴見川,恩田川があり、両河川沿いに幅500m程度で沖積低地が分布する。
(地表踏査(精査)結果)
地表踏査(精査)は、横浜市の北端部に位置する青葉区の浅層反射法探査測線沿いで行った。
調査地北東部〜中部にかけては概ね標高50〜60m程度の多摩丘陵に位置している。本地域は、宅地造成による地形の改変が進み、尾根部の切り土や沢の埋め立てにより旧地形や地質露頭の多くは失われている。逆に建設中の道路や造成地の切り土面に新たな露頭が認められる。このような露頭には、多くの場合ローム(多摩ロームまたは下末吉ローム)が認められるが、一部では基盤をなす上総層群の王禅寺層の泥岩が見られる。
上総層群の一般的な構造は東〜北東方向に傾斜3〜5゜程度で緩く傾斜するものであるが、反射法探査測線沿いでは、南東方向に2〜5゜で傾斜している。これは、測線南方に位置する溝口地向斜に影響するものと考えられる。