5−4 既往トレンチ(堤ほか1991)に対する考察

上岡枝下流地区トレンチから最終活動時期が7,000y B.P.〜2,080y B.P.と推定された。これは、既往調査(堤ほか1991)では変位の確認されていない地層より上位の地層において断層変位を確認したことになる。既往調査と上岡枝下流地区トレンチが500m前後の近距離であり、同じ中央部セグメントであるにもかかわらず、最終活動時期に同セグメント内とは考えられない動きをしたことになる。これは、上岡枝地区周辺では菊川断層は雁行し、小規模な破砕帯となっていくつかに分かれて存在し、既往調査(堤ほか1991)地点では、最終活動時期には大きな変位はなかったためと推定されるが、確認はできていない。

既往調査結果では20,000y B.P.〜15,000y B.P.に活動があったとされている。図5−4−1に既往トレンチスケッチ図を示す。既往調査の解釈では、図に示す「N面において3層と4層は断層によって切られているが、1層は断層を覆って堆積している。また、2層は断層に挟まれたくさび形の部分に堆積しているが変位を受けた様子は見られない。」とし、菊川断層のイベントは3層・4層堆積後、1層・2層堆積前としている。しかし、スケッチ結果から、既往トレンチでのイベントは、2層・3層・4層堆積後、1層堆積前と見えなくもない。すなわち、イベントにより3層・4層間に2層が落ち込み、その後、2層は落ち込んだ部分以外は侵食され平坦になり、1層が堆積したと考えられる。その場合、イベントは2層堆積後となり、既往トレンチでは15,000y B.P.以降に活動があったものと解釈される。

上記解釈に従った場合、菊川断層の総合評価は以下の様になる。