4−1−5 下保木地区における浅層反射法探査結果に対する考察

下保木地区で昨年実施した浅層反射法探査結果から推定した断層位置と、実際にトレンチ掘削によって確認された断層の位置が平面位置において最大10m程度のズレがあることが確認された。ここでは、このズレの原因についてまとめる。

図4−1(図4−1−15)に浅層反射法探査の測線及びトレンチ位置を示す。トレンチは浅層反射法探査の測線の距離程310m付近を、距離にして15〜20mはなれた南東側の農地に投影した位置を中心として掘削を開始した。これは、図4−1(図4−1−16)に示すように、浅層反射法の結果において、反射面の不連続の箇所から推定した断層の位置を参考にしたためである(この際にボーリングNo.1−3、No.1−4の結果から基盤深度に6mの標高差があることを確認している。)。また、浅層反射で確認された比較的良好な反射面(図4−1−5中A面と呼ぶ)とボーリング結果から得られた基盤(花崗岩)の上面深度が良く対応していることから、このA面を基盤からの反射面と推定した。そうした場合、距離程320m付近の反射面が乱れているが、この原因は、基盤の形状がみだれているのではなく、地表浅部の速度の不均質が主な要因であろうと推定した。これについてはモデル計算を行って検討している(平成8年度報告書:P188〜190)。

モデル計算の結果から、基盤の段差は距離程310m付近にあることから、ここを断層位置とした。

実際にトレンチを行った結果では基盤の段差は図4−1(図4−1−17)に示すボーリングNo.1−11とNo.1−12の間にあった。この位置を浅層反射法の測線に投影すると距離程297m付近となり、浅層反射の記録では基盤の段差を示するような記録は不明瞭である。

この原因として次の点があげられる。

@実際のトレンチ(最深部:基盤)の位置(中心線)は浅層反射法の探査測線から15〜20m外れた位置となった。これは用地上の問題から探査側線が制約されたもので、このため、探査測線位置での基盤の段差の位置とトレンチ位置での基盤の段差の位置にズレを生じた。

Aこの基盤の段差地形は、トレンチ位置を決定するためのボーリング及びトレンチ結果より河岸段丘の段丘崖であることがほぼ明らかとなった。このことより、基盤の段差は図4−1(図4−1−15)に示した推定断層線のような直線的なものでなく、侵食によって形成された曲線的(地形なり)なもので、トレンチの北西側探査側線付近では山体と平行に屈曲しているものと考えられる。

B図4−1−18に現在まで実施したボーリング結果から基盤(花崗岩)上面のコンターマップを作成した。データ(ボーリング)がトレンチ近傍に集中しているため、端部の精度は落ちるが、基盤の段差の位置は浅層反射法探査測線では距離程310m付近に位置する。

Cまた上記A、Bの予想と調和的なのが、図4−1−19(平成8年度報告書:P180)に示す重力探査の結果である。この長周期の重力分布ではトレンチ位置(断層の位置)で一番コンターが密になっており、その方向は北より(浅層反射法の測線では終点側)の方向を示している。

Dトレンチで確認した断層とその周辺の岩盤状況から

a.探査が風化帯中の断層であるため、周辺の岩盤との物性値のコントラストが小さい。

b.断層による鉛直落差が80cm程度以下であり小さく、把握しにくい。

 以上が浅層反射法で断層位置が把握できにくかった最大の理由と考えられる。