(1)地質観察結果

下保木地区平面図を図4−1−2に、トレンチスケッチ結果を図4−1−3に示す。また、図4−1−4に下保木地区断面図を示す。表4−1−1に地質構成表を示す。

トレンチ内では、基盤である広島花崗岩類、扇状地堆積物であるB層以浅の地層を観察している。それ以深のA層、段丘堆積物である@層はボーリング調査により確認している。

トレンチ内の地質は基盤を除き、木屋川支流からの扇状地堆積物からなり、姶良Tnテフラ(AT)が確認された。

基盤岩は、広島花崗岩類からなる。トレンチ観察では、風化進行し、マサ状〜軟質化した風化花崗岩からなる。部分的に暗色包有物を取り込む。風化部では節理が発達し、多数の断層が観察される。断層は灰色〜黄灰色の幅1.0〜5.0cmの断層粘土からなり、多くはN60〜80°W70〜80°Sを示す。断層の走向は菊川断層の走向に対し、雁行方向(ミ型)を示す。ボーリング調査では、トレンチ地点より木屋川側では基盤の標高差が約6m確認されており、標高差のあるところを境に、山側(トレンチ地点側)ではマサ状〜風化花崗岩であるのに対し、川側は風化岩〜新鮮岩からなる傾向を示す。

@層はボーリングNo.1−3、No.1−5、No.1−11で観察される。粗粒砂〜中礫主体で、礫は円〜亜角の花崗岩、安山岩、緑色岩、頁岩、石英斑岩からなる。木屋川上流部の地質の礫を含むこと、礫の円磨度から@層は木屋川本流の段丘堆積物と考えられる。

A層は@層同様にボーリングNo.1−3、No.1−5、No.1−11で観察される。細粒砂〜中礫を主体とし、シルト層の薄層を数層挟む。礫は亜円〜亜角の花崗岩、頁岩、流紋岩を主体とし、木屋川本流の堆積物と沢からの扇状地堆積物が指交関係にあるものと考えられる。

B層以浅は、沢からの扇状地堆積物からなる。中礫〜大礫主体の礫層で、礫は亜角〜亜円、礫種は花崗岩がほとんどを占める。まれにアプライト、頁岩を含む。淘汰は悪い。基質は粗粒砂からなる。

C層は、極細粒砂〜極粗粒砂(C−a層)、中粒砂〜中礫(C−b層)、シルト〜細粒砂(C−c層)からなる。極細粒砂〜極粗粒砂(C−a層)は、暗青灰色〜黄灰色を呈し、部分的に葉理が認められる。中粒砂〜中礫(C−b層)は、黄灰色〜青灰色を呈する。礫は亜円〜亜角で、礫種は花崗岩主体でまれに頁岩を含む。淘汰は悪く、層状〜レンズ状に分布する。シルト〜細粒砂(C−c層)は、青灰色〜黄灰色を呈し、炭化植物片を含む。D層との境界付近では部分的に泥炭層を狭在する。

D層は、テフラで淡灰色〜淡桃色を呈する。後述するように分析の結果、姶良Tnテフラと判定された。掘削中に最大層厚は20cmを確認している。連続性が悪く一部レンズ状に分布する。

E層は、黄灰色〜灰褐色の中礫〜細礫主体の礫混じり粗粒砂〜礫層からなる。シルト〜中粒砂を数層挟む。

F層は、黄褐色〜赤褐色の粗粒砂〜大礫主体。礫は亜円〜亜角、礫種は花崗岩主体で、一部頁岩を含む。淘汰は悪い。細粒〜中粒砂を数層挟む。褐鉄鉱のシミだしが多数認められる。

G層は、青灰色〜赤褐色のシルト〜中粒砂からなる。青灰色のシルト〜中粒砂内には炭化した植物片が多数認められ、部分的に泥炭層を狭在する。細礫層〜中粒砂層が数層レンズ状に狭在する。F層、H層との境界付近では褐鉄鉱の濃集部が帯状に認められる。

H層は、淡灰褐色〜灰褐色の細粒砂〜中礫主体。級化構造が認められ、数層の堆積サイクルが観察される。部分的に褐鉄鉱のシミだしが認められる。また、G層の境界付近では泥炭層も一部観察される。

I層は、淡灰褐色〜灰褐色細粒砂主体。細粒砂〜細礫の級化構造発達し、数層の堆積サイクルが観察される。細粒砂層内では部分的に炭化植物片が観察される。

J層は、灰褐色粗粒砂〜中礫主体。部分的に大礫〜中礫が認められる。礫は亜円〜亜角礫、礫種は花崗岩主体。淘汰は悪い。

K層は、明黄灰色〜黄褐色の細粒砂〜細礫主体。礫は亜円〜亜角、礫種は花崗岩主体。一部、炭化植物片を含む。

L層は、粘土〜粗粒砂からなる。表面は耕作土。

B層以浅の扇状地堆積物は、トレンチ周辺では大きくは5°前後で南方向に傾斜している。ボーリングNo.1−3で確認した姶良Tnテフラの深度から、トレンチより木屋川側では傾斜が緩くなり、ボーリングNo.1−3付近では、ほぼ水平に近いものと推定される。

活断層はトレンチ内溝堀区間に確認され(図4−1−3図4−1−5図4−1−6)、後述するように姶良Tnテフラ(AT)以深を変位させている。断層の走向傾斜は、N65°W80°Nを示し、菊川断層南部の走向は大きくはN35°Wであることを考えると、雁行関係(ミ型)にあるものと考えられる。また、条線は走向がN56°Wで傾斜は22°NWであった。

ボーリングNo.1−11、ボーリングNo.1−12間に基盤(花崗岩)の段差が約6m確認されているが、この段差は、ボーリングNo.1−10の斜めボーリングでトレンチ内溝堀区間で確認した断層以外は確認されないことや、トレンチスケッチ結果及び基盤の段差地点を境に川側の花崗岩が比較的新鮮岩が多いのに対し山側は強風化していることから、埋没した侵食段丘崖である可能性が高いと考えられる。