5−2−3 断層の位置と変形様式

露頭観察の結果から推定される堆積物の変形様式は、以下のように解釈できる。図5−2−4にその地質断面図を示す。

大河内路頭付近で東から連続する断層の走向がねじれ、低角度化するのに伴い、河川に堆積した地層に著しい圧縮力が働いた。この結果、粗粒堆積物主体の下部層と細粒堆積物主体の上部層との境界にスラストが生じるとともに、上部層中には層理面にそってせん断および側方への著しい短縮が生じ地層は急傾斜となった。圧縮の方向はスラストの条線の方向から判断し、東から西に向かって働いたと推定される。この方向は、菊川断層の形態である左横ずれと矛盾しない。

圧縮力の原因としては、左横ずれ・縦ずれの両面が考えられるが、横ずれ断層に伴うフラワー構造(図5−2−5)による物と考えられる。

最新の断層活動の位置は、限定はできないが本露頭の川側・および山側が考えられるが、地形的な明瞭さからすると、山側の可能性が高いものと考えられる。

断層活動の時期については、花粉分析の結果より、更新世中期以降に激しい断層運動があったことが推定される。しかしながら、現在の地形には明瞭な横ずれの変位地形が認められないことから、更新世後期以降断層活動自体が不活発となったか、少なくとも横ずれの活動は活発でなくなった可能性が考えられる。

図5−2−5 正のフラワー構造(Harding,1985C)