(4)まとめ

大河内地内の堆積物が堆積した当時は、周辺に落葉広葉樹を伴った冷温帯南部の針葉樹林が生い茂っていたものと推定される。現在の植生からは考えにくいトウヒ属とスギ属の混交する特徴的な古植生を示し、トウヒ属は中期更新世まで西日本でも広く分布した冷温帯のヒメバラモミの可能性が示唆された。

堆積盆地の周辺の古環境は、時間とともに水辺から乾燥地に変遷したことが推定される。

試料採取地の地層は、メタセコイア属などの第三紀型植物群の花粉化石が検出されないこと、最終間氷期以降スギ属とトウヒ属が同時に高率になるような花粉化石群集は知られていないことから、中期更新世頃に堆積したと考えられる。なお、本郷地区との対比については、若干植生が異なっていることから時代的にも若干異なる可能性があるが花粉化石による情報からは、詳細な層序はたてられず、これ以上の見解は得られなかった。