このような地下の密度差に起因する重力の違いを地表で観測し、主に地下の基盤構造を推定する物理探査が重力探査法(以下マイクログラビティ探査と呼ぶ)である。
マイクログラビティ探査は、一般の重力探査(探査深度数km以上)よりも探査範囲を小さくし、測定点密度を大きくとり、浅部の基盤情報を探査するものである。一般的に重力探査では測定間隔の5倍程度以深の密度構造を探査することが可能である。よって、深度100m以浅の浅部構造を探査するためには測点間隔を20m以下に設定する必要がある。また、このような浅部の構造を探査するためにはより高精度な測定器と十分な測定精度が必要となる。今回の探査では測定分解能1マイクロgal(10−6gal)という高精度な測定装置と閉環測定を併用し、十分に精度の高い測定を行った。
マイクログラビティ探査は萩ヶ台地区および下保木地区の2カ所で実施した。ここで、萩ヶ台地区では推定されている断層の位置を大局的に捉える目的でやや広範囲(測定間隔(最小測定間隔50m)に実施し、下保木地区ではより詳細に(浅部の)断層位置を確定する目的で高密度(最小測定間隔12m)に測点を配置した。
@萩ヶ台地区
菊川断層の中央部域に位置し、この北西部で既存のトレンチ調査が実施されており、確実度の高い箇所である。探査範囲は断層の推定位置から、両側に約1000m〜2000mの範囲で実施し、推定されている断層の位置を捉える目的で実施した。測定点間隔は約50m〜300mとした。
A下保木地区
既存資料および地形・地質解析から推定される断層位置の南端部に位置し、当地区から南側での断層の連続性が不明瞭になっている地区である。この地区では他の物理探査(比抵抗映像法、浅層反射法)も実施している。探査の範囲は他の探査測線を取り囲むように設定し、他の物理探査結果と比較検討が可能なようにした。測点の間隔は約12m〜30mとした。
探査範囲は萩ヶ台地区で、2000m×3400m、測定点数200点、下保木地区で探査範囲、200m×600m、測定点数150点を実施した。
探査・解析探査対象深度はおおむね以下の通りである。
(a)萩ヶ台地区:深度300m程度以深の重力分布(長波長成分)
深度300m程度以浅の重力分布(短波長成分)
(b)下保木地区:深度数100m程度以深の重力分布(長波長成分)
深度数十〜100m程度の重力分布(短波長成分)