(1)電気探査(比抵抗映像法)

電気探査(以下比抵抗映像法と呼ぶ)。比抵抗映像法は、電気探査のうち水平探査を発展させたものである。従来の水平探査では、結果を2次元的に表示する方法として疑似断面法が用いられてきた。しかし、この方法は見掛比抵抗(観測データ)をそのまま用いたものであり、複雑な比抵抗構造や測定データに含まれている地形等の影響を取り除いて表現する事は困難であった。これに対し、比抵抗映像法は、大型コンピュ−タ−を用いて測定データから比抵抗構造を逆解析することにより、真の比抵抗構造を求めることが可能である。したがって、従来の電気探査解析手法と比較して高精度で客観的な結果を得ることが可能である。

比抵抗は、一般に地質の違いや含水比等の差によって値が大きく変化する。このため、測線下の比抵抗を連続的に探査する事により、地質の違いや、破砕帯等(一般には低比抵抗帯となって解析断面に現れる。)を推定することが可能となる。また、解析過程で地形の変化量も補正可能なので、ある程度起伏に富んだ測線上においても探査が可能であるといった特徴がある。一方、比抵抗にあまりコントラストが生じないと思われる箇所での(海岸近傍等)での探査は難しい。

@萩ヶ台地区

萩ヶ台地区は菊川断層の顕著なリニアメントが確認されている地域に位置する。当地区の北西延長部では既存のトレンチ調査も実施されており、確実度の高い箇所である。よって、砂層位置の推定には、反射法地表探査の適用が望ましいが、当地区では推定される断層が山すそを通っており探査測線沿いの起伏が激しいこと、基盤深度が浅いことから、浅層反射法の適応は困難と判断し、比抵抗映像法を適用した。

探査測線は推定される断層の直交方向に1測線、測線長300mを設定し、主に断層位置を推定する目的で実施した。探査・解析の深度は、地質踏査の結果から測線近傍の河川河床部で確認された基盤岩と探査測線との標高差を考慮し、探査・解析深度は15mとした。

A下保木地区

既存資料および地形・地質解析から推定される断層位置の南端部に位置し、当地区から南側への断層の連続性が不明瞭になっている箇所である。しかしながらリニアメント延長の扇状地面に低崖が認められることから、この地区での断層位置を把握することは断層の南部の活動性を評価する上で重要な地区であると判断した。探査測線は推定する断層に直交する方向に1測線190m設定した。また、探査・解析深度は、測線標高と地質踏査で確認されている基盤標高との標高差を考慮して30mとした。