ｔｉｔｌｅ

（３）南部地域（川西町～米沢市）
３－１）川西町箕の輪～川西町上小松地区

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

米沢盆地の北西縁にあたりＹＨ２、ＹＭ、ＹＬ２、ＹＬ３、ＹＬ４面が分布する。

箕の輪付近のＹＬ３面には南北方向の直線的な段差（１．０～１．５ｍ）が認められる（ＰｈＹ２０－２８）。この南方は方向を北北東－南南西方向に変え、ＹＬ３面断層崖（ＰｈＫ６－７）、ＹＭ面の撓曲として認められる。

飯豊町東山付近では、ＮＬ４面にバルジ状の高まりが平行して２列認められる。その方向は南北ないしは北北東－南南西で、北側へ次第に不明瞭となるように見える。

現地で地表踏査および聞き取り調査を実施した結果、人工のものではないことが判明したが、地形改変が進んでおり詳細は不明である。

＜地質＞

下位より新第三系中新統、鮮新統、第四系下部更新統および段丘堆積物が分布する。

段丘堆積物は、高位段丘面（ＹＨ１面、ＹＨ２面）堆積物、中位段丘面（ＹＭ面）および低位段丘面（ＹＬ１面～ＹＬ４面）堆積物が分布する。

〔鮮新統〕

丘陵部に広く分布し、層相は、固結度の低い礫岩、砂岩およびシルト岩からなり、凝灰質砂岩、凝灰質シルト岩、炭質泥岩、軟弱な細粒凝灰岩および軽石質凝灰岩が挟在する。礫岩は、流紋岩を主体とし、シルト岩、凝灰岩、花崗岩類、安山岩などからなる。砂岩は、トラフ型の斜交層理が認められ、明瞭な浸食面を示し、側方への岩相変化が著しい（Ｐｈ２７４７－３）。シルト岩は、概ね塊状であるが、細粒砂岩との細互層部や細粒砂岩を挟在する。また、亜炭や植物片を含んだ炭質となる部分がある（ＰｈＹ２１－２６）。東山工業団地の付近では、火砕流堆積物の二次堆積物と考えられる、比較的淘汰の良い凝灰質粗粒～細粒砂岩と、やや淘汰の悪い軽石円礫岩の細互層が分布する（Ｐｈ２７４７－１９）。細互層は、平行層理・低角な斜交層理が認められ、シルト岩の薄層が挟在する。軽石片は、最頻径０．５～１ｃｍ、最大径４ｃｍである。層理面の走向傾斜から、背斜構造が推定され、背斜の西翼では概ね８ﾟ～１５ﾟ程度で緩傾斜となっており、背斜の東翼では２５ﾟ～３５ﾟである。

本地域の丘陵部には、赤色土化した礫岩やシルト岩が分布し、背斜軸部付近は、正断層系の割れ目が多く認められる（Ｐｈ２７４７－５～７，１０）。

図４－３－３９詳細地形区分図（川西町下小松地区

〔更新統〕

丘陵頂部に分布し、層相は、砂礫および火山灰質シルトからなる（Ｐｈ２５５５－１）。

砂礫は、赤色土化が著しく、軟質である。花崗岩類、流紋岩、凝灰岩および安山岩の亜円～亜角礫（最頻径３～４ｃｍ、最大径３０ｃｍ）を主体とし、基質は、褐色の火山灰質細粒砂～火山灰質シルトからなる。火山灰質シルトは、亜円～亜角礫（径２～３ｃｍ）を含み、赤色土化し粘土状である。

背斜軸部付近では、正断層系の割れ目が多く認められる（Ｐｈ２７４７－５～７，１０）。

〔段丘堆積物〕

各段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

＜年代＞

既存資料では、川西町大塚においてＹＭ面堆積物と考えられる泥炭質粘土から２５７４０±１３００年の年代値が得られている。

一方、飯豊町東山に分布する鮮新統の酸性凝灰岩中のジルコン粒子は、８６０万年（±１００万年）前のフィッショントラック年代を示す。これは新第三紀中新世の年代であり、非常に古い年代値となった。古い年代値がでた原因としては、本凝灰岩が火砕流堆積物の２次堆積物であり、堆積物の運搬時に古い地層の岩片を取り込んだ結果であることが挙げられる。従って、８６０万年（±１００万年）前という年代は、鮮新統の酸性凝灰岩自体の年代ではないものと推定される。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

基盤の地層の層理面は、ＮＷ－ＳＥ～ＮＥ－ＳＷ走向で、地質断面図⑥に示したように、長波長の幅広い向斜と背斜が繰り返している。また、鮮新統～更新統の地層には、正断層系の割れ目が発達しており、褶曲構造に伴って背斜軸部付近に形成されたと考えられる。したがって、断層露頭は観察されていないが、基盤の褶曲に伴う断層運動により、ＹＬ３面に認められた低断層崖を形成したものと考えられる。さらに飯豊町東山付近に認められるＮＬ４面のバルジ状の高まりは、基盤の向斜軸の延長方向に位置している。このバルジ状地形の形成には、基盤の褶曲運動が関わっている可能性が考えられる。

ⅱ）地形断面調査

＜川西町下小松地区＞

川西町下小松地区において詳細地形区分図（図４－３－３９）に示した３測線で、地形断面測量を実施し地形断面図を作成した（図４－３－４０）。

３測線ともにＹＬ３面における断層崖が認められ、断層崖の段差は、０．９～１．３ｍである。

地表踏査結果からも、本地区のＹＬ３面には１．０～２．０ｍ段差の断層崖がみられる。

この段差を断層運動による変位量とみなせば、本地区の変位量は１．０～２．０ｍとなる。

なお、地表踏査にて本地区のＹＬ２及びＹＭ面に撓曲崖がみられ、段差は、ＹＬ２面で約４．０ｍである。

図４－３－４０下小松

３－２）川西町下奥田～大船上地区

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

黒川流域にはＹＭ、ＹＬ３、ＹＬ４面が広く分布する。

下奥田から上奥田にかけて変位地形は認められない。黒川左岸の雷付近から大舟上にかけてＹＭ面が２列にわたって小丘状に盛り上がっている（ＰｈＭ１－１４，Ｋ３－２）。また

その付近のＹＬ３面にはゆるやかな傾斜の変換点が認められる（ＰｈＹ１９－２６）。

一方、黒川右岸の下在家付近のＹＬ３面には直線的な段差が認められる。北東－南西方向で高さが３～３．５ｍである（ＰｈＹ２０－１６）。この南西側の延長は基盤の山地に細長く延びた凹地の連続として認められる。

＜地質＞

下位より新第三紀鮮新統、第四系更新統および段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、中位段丘（ＹＭ面）堆積物および低位段丘（ＹＬ３面、ＹＬ４面）堆積物が分布する。

〔鮮新統〕

丘陵部に分布する。固結度の低い礫岩を主体とし、シルト岩、砂岩、酸性凝灰岩からなる。礫岩は、花崗岩類、流紋岩、デイサイト、シルト岩、凝灰岩などを主体とする。砂岩、シルト岩が挟在し、弱い斜交葉理が認められる。砂岩は、雲母片を含む中粒～細粒砂からなる。シルト岩は、一部、凝灰質極細粒砂岩と凝灰質シルト岩の細互層となる。

〔更新統〕

丘陵部に分布し、岩相は、固結度の低い礫岩を主体とし、シルト岩、砂岩、酸性凝灰岩および炭質泥岩が挟在する。火山灰質細粒砂とシルトの細互層、砂礫、火山灰質シルトからなり、鮮新統を不整合に覆う。砂礫は、大部分が赤色土化し、礫は粘土化している（Ｐｈ２６８８－３６）。礫種は、花崗岩類、流紋岩、安山岩、デイサイト、

凝灰岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径３～６ｃｍ、最大径５０ｃｍ）からなる。

基質は、赤褐色のシルト～粘土質細粒砂からなるが、アルコース質な部分も認められる。火山灰質シルトは、塊状で中粒～粗粒砂が挟在する。

全体に正断層性の割れ目が多く認められる（Ｐｈ２６９４－３４）。

〔段丘堆積物〕

ＹＭ面段丘堆積物は、川西町上奥田増沢付近では、礫混じりシルトおよび砂礫分布する（Ｐｈ２７２２－３）。礫混じりシルトは、褐灰～褐色を呈し、層厚は約６０ｃｍである。砂礫は、花崗岩類、凝灰岩、流紋岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径１５ｃｍ）を主体とし、層厚は約３ｍである。基質は、赤褐色を呈し、シルト～粘土質シルトである。川西町上奥田飯坂付近では、砂礫、シルトが分布する。層相は側方への連続が悪く層理が一定しない。何れも砂礫は赤色土化が著しく、礫は粘土化している。

ＹＬ３面およびＹＬ４面段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

図４－３－４１詳細地形区分図（川西町雷地区）

＜年代＞

既存文献では、段丘面の年代についての記載はない。

また、地表踏査において、年代決定に有効な試料は得られなかった。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

基盤の地層の層理面は、ＮＷ－ＳＥ～ＮＮＥ－ＳＳＷ走向で、地質断面図⑦に示したように、長波長の幅広い向斜と背斜が繰り返している。丘陵縁辺部の鮮新統の傾斜方向は、地形面の撓曲構造にほぼ一致していると考えられる。また、更新統の地層には、正断層系の割れ目が多く認められ、褶曲構造に伴って背斜軸部付近に形成されたと考えられる。断層露頭は観察されていないが、褶曲に伴う断層運動により、ＹＭ面、ＹＬ３面に認められた撓曲崖および低断層崖を形成したものと考えられる。

ⅱ）地形断面調査

＜川西町雷地区＞

川西町雷地区において詳細地形区分図（図４－３－４１）に示した１測線で、地形断面測量を実施し地形断面図を作成した（図４－３－４２）。

雷Ａ測線は、小丘状に盛り上がったＹＭ面と、西上がりの撓曲を横断する測線である。

ＹＭ面においては、小丘部の比高は３．７～４．４ｍであり、面の西縁・東縁は、いずれも隣接するＹＬ３面下に埋没する。地表踏査においては、ＹＭ面に西上がりの撓曲崖がみられ、比高は８～１０ｍである。

ＹＬ３面には、緩やかな撓曲崖がみとめられ、その比高は１．７ｍである。

図４－３－４２雷

３－３）川西町時田～米沢市下小菅

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

山地の周辺にＹＨ２、ＹＭ、ＹＬ２面が細長く分布する。

川西町山崎付近ではＹＭ面の撓曲が明瞭であり、背後に逆傾斜面を伴うため尾根状となる（ＰｈＭ２－２１）。

米沢市下小管付近ではＹＨ２面に撓曲崖や鞍部が多数認められ、その南方のＹＬ３面にも撓曲崖および低断層崖が認められる（ＰｈＫ４－１９）。さらに南方へ断続的に直線状の地形が認められ、京塚付近ではＹＬ２面に明瞭な撓曲崖が認められる。

＜地質＞

下位より新第三系中新統、鮮新統、第四系更新統および段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、高位段丘（ＹＨ２面）堆積物、中位段丘（ＹＭ面）堆積物および低位段丘（ＹＬ３面、ＹＬ４面）堆積物が分布する。

〔中新統〕

丘陵東縁部に分布し、岩相は、礫岩、砂岩、シルト岩、凝灰岩からなる。礫岩は、花崗岩、安山岩、流紋岩、泥岩などの細礫からなり、砂岩は粗粒～細粒で、中新統の下部はシルト岩、砂岩とも凝灰質である。下小菅付近のリニアメント近傍では、凝灰質シルト岩が分布し、地層面の走向・傾斜は、Ｎ１６ﾟＷ・６２ﾟＷである。その南の米沢市京塚付近では、砂礫層と凝灰岩層からなり、層理面はほぼ水平である（ＰｈＯ２－１５）。

〔鮮新統〕

丘陵部に分布し、岩相は、固結度の低い礫岩を主体とし、シルト岩、砂岩、酸性凝灰岩および炭質泥岩が挟在する（Ｐｈ２６９４－１２）。礫岩は、花崗岩類、流紋岩、デイサイト、シルト岩、凝灰岩などを主体とする。砂岩、シルト岩を挟在し、弱い斜交葉理が認められる。砂岩は、雲母片を含む中粒～細粒砂からなる。シルト岩は、一部、凝灰質極細粒砂岩と凝灰質シルト岩の細互層および粗悪な炭質泥岩が挟在する。

層理面の走向・傾斜は、川西町虚蔵空山南西方～南東方では、Ｎ１６ﾟＷ～Ｎ２９ﾟ

Ｅ・１２ﾟＥ～４６ﾟＷおよびＮ４０ﾟＷ・９ﾟＮＥ～Ｎ４５ﾟＷ・１８ﾟＳＷである。

〔更新統〕

活断層詳細図（付図４－３）では丘陵を覆うように広範囲な分布が図示されていが、層厚は薄い。火山灰質細粒砂とシルトの細互層、砂礫、火山灰質シルトからなり、鮮新統を不整合に覆う。火山灰質細粒砂とシルトの細互層は、黄褐色を呈し、層理面の走向・傾斜は、ＮＮＷ－ＳＳＥ～ＮＷ－ＳＥ・８ﾟ～１６ﾟＥである。砂礫は、大部分が赤色土化し、礫は粘土化している。礫種は、花崗岩類、流紋岩、安山岩、デイサイト、凝灰岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径３～６ｃｍ、最大径５０ｃｍ）からなる。基質は、赤褐色のシルト～粘土質細粒砂からなるが、アルコース質な部分も認められる。火山灰質シルトは、塊状で中粒～粗粒砂が挟在する。

図４－３－４３　細地形区分図（米沢市下小菅地区）

〔段丘堆積物〕

ＹＨ２面、ＹＬ３面およびＹＬ４面段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

ＹＭ面段丘堆積物は、川西町上奥田増沢付近では、礫混じりシルトおよび砂礫が分布する（Ｐｈ２７２２－３）。礫混じりシルトは、褐灰～褐色を呈し、層厚は約６０ｃｍである。砂礫は、花崗岩類、凝灰岩、流紋岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径１５ｃｍ）を主体とし、層厚は約３ｍである。基質は、赤褐色を呈し、シルト～粘土質シルトである。川西町上奥田飯坂付近では、砂礫、シルトが分布する。層相は側方への連続が悪く層理が一定しない。何れも砂礫は赤色土化が著しく、礫は粘土化している。

＜年代＞

既存文献では、段丘面の年代についての記載はない。

また、地表踏査において、年代決定に有効な試料は得られなかった。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

基盤の地層の層理面は、ＮＷ－ＳＥ～ＮＮＥ－ＳＳＷ走向で、断面に示したように、長波長の幅広い向斜と背斜が繰り返している。丘陵の内部は概ね緩傾斜で１０ﾟ前後であるが、丘陵の東縁では中新統が西側へ急傾斜している。丘陵縁辺部の鮮新統の傾斜方向は、地形面の撓曲構造にほぼ一致していると考えられる。また、更新統の地層には、正断層系の割れ目が多く認められ、褶曲構造に伴って背斜軸部付近に形成されたと考えられる。断層露頭は観察されていないが、褶曲に伴う断層運動により、高位段丘面群およびＹＬ３面に認められた撓曲崖、低断層崖を形成したものと考えられる。

ⅱ）地形断面調査

＜米沢市下小菅地区＞

米沢市下小菅地区において詳細地形区分図（図４－３－４３）に示した１測線で、地形断面測量を実施し地形断面図を作成した（図４－３－４４）。

下小菅Ａ測線は、ＹＬ３面を横断し、低断層崖が不明瞭ながら認められる。段差は０．８ｍと低い。本地区にはＹＨ面にて、断層崖（東側）と撓曲崖（西側）が南北に平行して分布するが、ＹＬ３面では、東側の断層崖のみが分布している。

図４－３－４４下小菅

３－４）米沢市成島～米沢市遠山地区

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

米沢市街の西部にあたり、鬼面川（小樽川）が南西から北東へ流れる。鬼面川が米沢盆地に流入する両岸にはＹＨ２、ＹＭ、ＹＬ２、ＹＬ３、ＹＬ４面が広がっている。

成島ではＹＨ２、ＹＭ、ＹＬ３面に撓曲が認められる。ＹＨ２面およびＹＭ面は逆傾斜面を伴う。

鬼面川の南にはＹＬ３、ＹＬ４面が広く分布し、山沿いにはＹＬ１、ＹＬ２面が分布する。

また、その南の遠山町ではこれらの段丘面上に崖錐堆積物が覆う。米沢市吹屋敷～遠山地区ではＹＬ２、ＹＬ３、ＹＬ４面に明瞭な変位地形が認められる。断層崖は２本ないし３本平行に配列する。ＹＬ２、ＹＬ３面は背後に凹地を伴う（ＰｈＫ１－８）。

笹野地区は大規模な地すべり土魂が分布している。地すべり土塊中およびその前面の崖錐斜面にも直線状の地形は認められるが、連続性が良くない。

鬼面川左岸、口田沢付近では北北西－南南東方向の谷地形が認められ、川を挟んで中山越方向に連続するように見える。しかし、谷の両側の段丘面（Ｌ２，Ｌ４）に高度差は認められない（ＰｈＯ５－１）。その南方延長の大代原付近では西へ撓曲するＹＬ２面が確認される（ＰｈＯ６－９）。

日本の活断層において鬼面川左岸の山地に示されている確認度Ⅰの活断層地形（小樽川断層）は、段丘面変位が認められず、組織地形であると考えられる。

＜地質＞

下位より新第三系中新統、鮮新統、第四系更新統および段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、中位段丘（ＹＭ面）堆積物および低位段丘（ＹＬ１面～ＹＬ４面）堆積物が分布する。また、笹野山周辺は地すべりが多く、地すべり土塊および崖錐堆積物が広く分布する。

〔中新統〕

鬼面川、大樽川および支流の太田川流域に分布し、岩相は、暗褐色硬質シルト岩を主体とし、砂岩および細粒凝灰岩が挟在する。暗褐色硬質シルト岩は、厚さ１０～１５ｃｍ単位の中層理の顕著な岩相を示し（Ｐｈ２６８８－５，Ｏ６－１７）、局部的にノジュールが認められる。細粒凝灰岩は、暗灰～青灰色を呈し塊状で、変質の著しいモンモリロナイト質細粒凝灰岩が認められる（Ｐｈ２６８８－１０）。米沢市潜清水付近の鬼面川域では、流紋岩質～デイサイト質火山礫凝灰岩が分布する。石英粒と黒雲母片を多量に含み、局部的に弱溶結する部分がある（Ｐｈ２６８８－１６）。

図４－３－４５詳細地形区分図（米沢市遠山地区）

〔鮮新統〕

山地部、丘陵部、黒川および鬼面川流域に分布する。岩相は、礫岩、砂岩からなり、大部分は赤色土化し、礫は粘土化している（Ｐｈ２６８８－３）。礫種は、花崗岩類、流紋岩、安山岩、凝灰岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径２～３ｃｍ、最大径１０ｃｍ）を主体とし、基質は、粘土質細粒砂からなり、レンズ状に中粒砂岩が挟在する。鬼面川左岸に露出する礫岩は、花崗岩礫を多量に含む。

〔更新統〕

丘陵および山地部の頂部や鬼面川流域に分布し、層相は、砂礫からなる。大部分は赤色土化し、礫は粘土化している。礫は、花崗岩、流紋岩、安山岩、凝灰岩およびシルト岩の亜円～亜角礫（最頻径２～３ｃｍ、最大径１５ｃｍ）を主体とし、基質は、火山灰質中粒砂～シルトからなる。

〔段丘堆積物および崖錐堆積物〕

ＹＬ２面段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

ＹＭ面段丘堆積物は、米沢市石切町付近で、中新統の上に不整合で覆っているのが観察される。そこでは、両者を切る正断層が認められる（ＰｈＯ８－１９）。

ＹＬ３面段丘堆積物は、米沢市吹屋敷町付近では、礫径１０ｃｍ程度の円礫を含む砂礫からなる。

ＹＬ４面段丘堆積物は、川西町下之町南方の鬼面川では、砂礫が分布し、花崗岩、流紋岩、安山岩、凝灰岩およびシルト岩の亜円礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径３０ｃｍ）を主体とする。基質は、褐～赤褐色を呈し、粗粒砂～中粒砂からなる。（Ｐｈ２６８８－１３）。

崖錐堆積物は、笹野山の東側に地すべり土塊に伴って広く分布する。粘土質基質で、基盤の中新統の角礫を多く含む（Ｏ３－３１）。

＜年代＞

米沢市笹野では、ＹＬ３面上の遺跡から９０００～４０００年という年代値が得られている。また、米沢市小野川では、地すべり堆積物に覆われる粘土質砂から３８８０±１００年という値が得られている。米沢市遠山では、ＹＬ２面上に約６０００年前の遺跡（一ノ坂遺跡）が存在する。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

米沢市成島では、基盤の中新統とＹＭ面段丘堆積物の両者を切る小断層が認められた。この断層は変位が約２０ｃｍの正断層であり方向はＹＭ面を変位させているリニアメントの方向とほぼ同じである。ここで見られる断層は、リニアメントを形成する活動に伴って生じた可能性が高い。

また、基盤の地層の層理面は、ＮＷ－ＳＥ～ＮＮＥ－ＳＳＷ走向で、地質断面図⑧に示したように、長波長の幅広い背斜構造を呈している。基盤の地質構造とリニアメントの関係は明瞭でないが、基盤層の褶曲や褶曲に伴う断層運動により地形面の撓曲および低断層崖を形成したものと考えられる。

ⅱ）地形断面調査

＜米沢市遠山地区＞

米沢市遠山地区において詳細地形区分図（図４－３－４５）に示した３測線で、地形断面測量を実施し地形断面図を作成した（図４－３－４６）。

遠山Ａ測線は、ＹＬ３面に２列の断層崖がみられ、２列とも合わせた地形面全体の段差は２．３ｍである。なお、地表踏査では、２列の断層崖を合わせたＹＬ３面の段差は２．６ｍ程度である。遠山Ｂ測線は、ＹＬ４面において撓曲崖及び２列の断層崖がみられ、これらを全て合わせた地形面全体の段差は２．２ｍである。なお、地表踏査でもＹＬ４面に段差２ｍ程度の断層崖が認められている。遠山Ｃ測線は、測線西側よりＹＬ２面、ＹＬ３面、ＹＬ４面が分布しておりボーリング調査を行った測線である。ＹＬ２からＹＬ３面にかけて撓曲崖がみられ、段差は１．５ｍである。

図４－３－４６遠山

ⅲ）ボーリング調査

＜位置および数量決定の経緯＞

鬼面川右岸（米沢市吹屋敷～遠山地区）では、複雑に分布する低位段丘面に断層崖、撓曲崖が認められる。この地区の断層変位地形は、「新編　日本の活断層」（１９９１）に記載されておらず、断層変位や変形形態の確認および最終活動時期や活動間隔の推定を行うことを目的として、明瞭に断層変位地形が現れている米沢市遠山地区においてボーリング調査を実施した。ボーリング位置は図４－３－４５に示した。

ボーリングは、地層の面的な広がりを確認することを目的として、断層崖の上盤側（ＹＬ２面）で２本、下盤側（ＹＬ４面）で２本の計４本実施した。掘削深度は、下盤側により厚く地層が堆積していると考えられるため、上盤側（遠山Ｎｏ．１，２）各８ｍ、下盤側（遠山Ｎｏ．３，４）各１２ｍとした。

＜ボーリング調査結果のまとめ＞

ボーリング結果をもとに本地区の地層区分を行い、表４－３－５の層序表にまとめる。図４－３－４７に本地区の地質断面図を示す。

表４－３－５　遠山地区地質層序表

ＴＹ３層上面は、変位地形である撓曲崖・低断層崖をはさんで、東へ傾斜しており、西上がりセンスの変位を受けているものと判断される。地表踏査等では、本地点のＹＬ２面には撓曲崖がみられる。ボーリングＮｏ．１孔およびＮｏ．２孔は撓曲部に位置し、Ｎｏ．１孔より西では撓曲背後の凹地が存在している。以上の結果を考慮すると、本地区ＴＹ３層上面の上盤／下盤間の高度差は７．０ｍ程度と考えられる。

ＴＹ２層は、ボーリングでは、Ｎｏ．３およびＮｏ．４孔のみに分布している。低断層崖の上盤側にあたるＹＬ３面においても露頭でＴＹ２層と考えられる砂礫層がみられることから、ＴＹ２層も断層運動により変形している可能性がある。

ＴＹ１層は軟らかい腐植質粘土からなるが、ボーリングＮｏ．３およびＮｏ．４孔で確認されており、下盤側のみにみられる湿地性堆積物と考えられる。断層運動による変位は不明である。

図４－３－４７ボーリング地質断面図（米沢市遠山地区）

＜各孔の層相および１４Ｃ年代測定結果＞

１）遠山Ｎｏ．１（掘進長８ｍ）

［層相記載］

地表より深度０．４０ｍまでは旧表土からなり、黒褐色を呈する粘性の強い粘土からなり、腐植物を混入する。深度０．４０～１．７４ｍは、茶褐～黄褐色の粘土を主体とする。

深度１．７４～８．００ｍは、砂礫および粘土混じり砂礫を主体とし、粘土混じり砂層を挟在する。砂礫および粘土混じり砂礫では、礫はφ０．５～５．０ｃｍの角礫～亜角礫を主体とする。礫種は、安山岩＞流紋岩＞花崗岩＞凝灰岩＞頁岩である。マトリクスは粗砂主体で、一部に褐色粘土を混入する。砂礫層中に挟在する粘土混じり砂層は、深度１．７４～１．９４ｍおよび深度４．６２～４．８５ｍにみられ、褐色の粘土を混入する細砂を主体とする。

［１４Ｃ年代値］

深度０．１５～０．２８ｍに存在する腐植土より４．９５３±３６ｙ．Ｂ．Ｐの１４Ｃ年代値が得られた。

２）遠山Ｎｏ．２（掘進長８ｍ）

［層相記載］

地表より深度０．２６ｍまでは旧表土からなり、植物片を混入する腐植質粘土からなる。

深度０．２６～３．９７ｍは、粘土～シルト混じり粘土を主体とし、粘土混じり砂礫を挟在する。粘土は粘性が強く良く締まっている。また、腐植質粘土を２層準挟在している。腐植質粘土においては、木片を混入している。深度２．１１～２．６５ｍは粘土混じり砂礫層を挟在しており、泥岩・凝灰岩等の角～亜円礫を含む。マトリクスは、粘土混じりの中～粗砂からなる。

深度３．９７～８．００ｍは、粘土混じり砂礫を主体とする。礫はφ０．５～２ｃｍの亜角～亜円礫を主体とし、最大径は８ｃｍに達する。礫種は、安山岩＞頁岩＞凝灰岩＞花崗岩からなる。マトリクスは、粘土混じりの粗砂からなる。全体に不均質であり、粘土の含有量は変化に富む。

［１４Ｃ年代値］

深度０．１５～０．２５ｍに存在する腐植土より３．６９３±３１ｙ．Ｂ．Ｐ、２．８５～２．９０ｍに存在する木片より２４，１５９±９９ｙ．Ｂ．Ｐ、３．８３～３．９５ｍに存在する木片より２５．３０８±１０４ｙ．Ｂ．Ｐの１４Ｃ年代値が得られた。

３）遠山Ｎｏ．３（掘進長１２ｍ）

［層相記載］

地表より深度１．１６ｍまでは、軟質な腐植質粘土を主体とする。植物片を少量混入し、含水が多い。

深度１．１６～４．００ｍは砂礫および粘土混じり砂礫を主体とし、粘土混じり砂層を挟在する。砂礫および粘土混じり砂礫では、礫はφ０．５～２．０ｃｍの亜角～亜円礫を主体とし、礫種は安山岩≒頁岩＞花崗岩≒凝灰岩である。マトリクスは、砂質粘土～粘土混じり砂で、砂は中～粗砂主体である。挟在する粘土混じり砂は、中～粗砂主体で、淡緑色の粘土を混入している。

深度４．００～６．２９ｍは、灰～淡緑灰色の粘性土を主体とし、腐植質粘土を２層準挟在する。また、砂層を深度５．３２～５．７６ｍに挟在する。

深度６．２９～１２．００ｍは粘土混じり砂礫を主体とする。礫は、φ０．５～３．０ｃｍの亜角～亜円礫を主体とする。礫種は、安山岩＞花崗岩＞頁岩＞凝灰岩＞流紋岩である。マトリクスは、淡緑色の粘土を混入する中～粗砂を主体とする。全体に不均質である。

［１４Ｃ年代値］

深度０．５５～０．６５ｍに存在する腐植土より６，００５±３５ｙ．Ｂ．Ｐ、３．９５～４．１０ｍに存在する腐植土より２４．１５２±１０３ｙ．Ｂ．Ｐの１４Ｃ年代値が得られた。

４）遠山Ｎｏ．４（掘進長１２ｍ）

［層相記載］

地表より深度０．７３ｍまでは、耕作土からなる。深度０．７３～１．７６ｍは、黒色～暗灰色を呈する腐植質粘土を主体する。粘性は弱く、軟らかい。

深度１．７６～６．１３ｍは、粘土混じり砂礫を主体とし、砂層およびシルト層の薄層を挟在する。粘土混じり砂礫では、礫はφ１～１２ｃｍの亜円礫を主体とする。

礫種は、安山岩＞花崗岩＞凝灰岩＞流紋岩・頁岩・火山礫凝灰岩・礫岩、である。

マトリクスは、粘土分を混入する中～粗砂からなる。全体に礫支持の砂礫である。

挟在する砂層・シルト層は、中～粗砂主体である。

深度６．１３～８．５８ｍは、粘土・シルト・シルト混じり砂を主体とする。粘土は、緑灰～褐灰色を呈する均質で粘性の強い粘土主体で、腐植質粘土薄層や木片を含む。腐植質粘土は中腐植である。下方へ向かって、粘土～砂混じりシルト～シルト混じり砂に変化する。

深度８．５８～１２．００ｍは、粘土混じり砂礫を主体とし、礫混じりシルト層の薄層を挟在する。粘土混じり砂礫では、礫はφ１～１２ｃｍの亜円礫を主体とする。礫種は安山岩＞花崗岩＞凝灰岩＞頁岩、である。礫は新鮮で硬質なものが多い。マトリクスは粘土分を少量混入する中～粗砂主体である。全体に礫支持の砂礫である。

［１４Ｃ年代値］

深度１．１０～１．２０ｍに存在する腐植土より３，３８７±３０ｙ．Ｂ．Ｐ、６．３０～６．３６ｍに存在する木片より２３，９２５±１１１ｙ．Ｂ．Ｐ、６．５８～６．６４ｍに存在する腐植土より２４，１４９±９８ｙ．Ｂ．Ｐの１４Ｃ年代値が得られた。