ｔｉｔｌｅ

（１）北部地域（大江町～朝日町～白鷹町北部）
１－１）大江町富沢～朝日町玉ノ井地区

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

南西から北東へ流れる最上川に西から月布川が合流する最上川の東側には、ＡＬ２、ＡＬ３面が狭長に分布する（ＰｈＭ１０－２５）。最上川の西側には、大山および日光山があり、その北側および南側には中位段丘面と低位段丘面が広がる。

大江町藤田地区周辺にはＡＭ面が広く分布し、北西側へ傾動している（ＰｈＭ９－３０）。

また、ＡＨ面も同じく北西側へ傾動している（ＰｈＭ１０－２）。

大江町富沢地区では、ＡＨ面、ＡＭ面とＡＬ２面の境界が北東－南西方向で直線的である（ＰｈＭ９－３２）。

朝日町玉ノ井付近は秋葉山が孤立丘となり、その周囲に中位段丘面および低位段丘面群が分布する。このうち、ＡＬ１面に東上がりの撓曲崖および断層崖が認められる。

大江町富沢から連続する北東南西方向のリニアメントは玉ノ井付近で方向を北北東－南南西へ変え、ＡＬ１面中に西側が１．５～２．０ｍの高い段差として認められる（ＰｈＭ９－１４）。

さらにその南方延長ではＡＭ面とＡＬ１面の境界となる（ＰｈＭ９－１５）。

玉ノ井の西方栗木沢付近には、同じく北北東－南南西方向の直線状の段差地形がＬ１面に認められる。ここでは東側が約５ｍ高く、上盤側には国道２８７号が通っている（ＰｈＭ９－１２）。

朝日町大隅付近のＡＬ２面上には、南北方向で東側が約１ｍ高い撓曲崖が認められる（ＰｈＭ９－２０）。

＜地質＞

下位より新第三紀中新統、鮮新統および段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、高位段丘面（ＡＨ１面、ＡＨ２面）堆積物、中位段丘面（ＡＭ面）堆積物および低位段丘面（ＡＬ１面～ＡＬ４面）堆積物が分布する。

〔中新統〕

最上川左岸側の朝日町の丘陵部および山地部、最上川右岸側の大江町の山地部に分布する。岩相は、凝灰質砂岩～シルト岩、細粒凝灰岩および軽石質凝灰岩からなる。凝灰質砂岩～シルト岩は、朝日町玉ノ井～明神山東麓付近、大江町深沢～用付近に分布し、中粒～細粒凝灰岩が挟在する（Ｐｈ２５５６－９）。酸性細粒凝灰岩および軽石質凝灰岩は、本地域に広く分布し（ＰｈＭ９－２３）、大江町大山南東方では、凝灰質砂岩～シルト岩と細粒凝灰岩とが細互層をなす（Ｐｈ２５５５－Ｅ）。

層理面の走向・傾斜は、Ｎ４ﾟ～３２ﾟＷ・８ﾟ～３２ﾟＥないしＮ８ﾟＷ～Ｎ２８ﾟＥ・１０ﾟＷ～４０ﾟＷである。日光山北西方のリニアメント近傍では、層理面の走向はＮ４２ﾟ～４８ﾟＥと東に振れ、傾斜は２４ﾟ～４５ﾟＷとやや急になる。

〔鮮新統〕

大江町荻野付近から朝日町日光山南麓および中沢付近にかけて分布する。岩相は、細粒凝灰岩、凝灰質シルト岩を主体とし、軽石質凝灰岩を伴う。基底部は比較的固結度の低い礫岩からなる。細粒凝灰岩、凝灰質シルト岩および軽石凝灰岩は、塊状を呈しやや軟質で一部粘土化している。軽石凝灰岩と細粒凝灰岩は互層し、葉理が認められる。礫岩は、流紋岩、デイサイト、安山岩および凝灰岩の亜角～亜円礫（最頻径１～２ｃｍ、最大径６ｃｍ）を主体とし、比較的淘汰がよい。層厚は約５ｍで、凝灰質シルト岩の薄層（約５０ｃｍ）を挟在する。基質は、黄褐色を呈する固結度の低いアルコース質粗粒～中粒砂岩からなる。

軽石凝灰岩と細粒凝灰岩互層の層理面の走向・傾斜は、ＮＮＷ－ＳＳＥ・８～２０ﾟＥを示すが、大江町大山北西方のリニアメント近傍では、走向はＮ５６ﾟＥと東に振れ、傾斜は３６ﾟＮＷとやや急になる（Ｐｈ２５５５－２２）。

〔段丘堆積物〕

ＡＨ１面、ＡＭ面、ＡＬ２面、ＡＬ３面およびＡＬ４面段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

ＡＨ２面段丘堆積物は、秋葉山北西方のリニアメント近傍では、礫混じりシルト、火山灰質シルト、砂礫および中粒砂からなる（Ｐｈ２５５６－１６，１８，１０）。礫混じりシルトは、礫率は５０～６０％程度で凝灰岩の亜角～亜円礫（最頻径１～２ｃｍ、最大径１０ｃｍ）を含み、層厚は約７０ｃｍである。火山灰質シルトは、黄灰色、灰白色を呈し、層厚は約４０ｃｍである。砂礫は、凝灰岩の亜角～亜円礫（最頻径２～４ｃｍ、最大径１５ｃｍ）を主体とし、基質は、シルト～粘土からなる。一部、凝灰岩の亜角礫を主体とする層相を呈す。層厚は約１ｍである。中粒砂は、暗褐色、灰白色を呈し、雲母片を多く含む。層厚は約１．２ｍである。

ＡＬ１面段丘堆積物は、朝日町大谷の北東の谷の出口付近では、中粒砂、腐植質シルト、および砂礫からなる。中粒砂は、シルト～細粒砂を伴い、青灰色を呈す。腐植質シルトは、淡紫灰色を呈し、層厚は約２０ｃｍである。砂礫は、流紋岩、デイサイト、安山岩および凝灰岩の亜円～亜角礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径２０ｃｍ）を主体とし、層厚は約６ｍである。基質は、明褐色を呈す粘土質細粒～中粒砂からなる。礫には級化層理が認められ、層理面はほぼ水平～緩く南西へ傾斜する。砂礫中には、腐植質粘土（層厚約１０ｃｍ）および腐植質細粒砂（２層準；層厚３０～４０ｃｍ）を挟在する（Ｐｈ２５５５－２８，３３）。

＜年代＞

既存資料では、本調査地域外であり、流域も異なるため単純に地形面の対比はできないが、寒河江川流域の中位段丘面堆積物から、３万年代の年代値が得られている。

地表踏査では、段丘面の年代を特定できるような試料は得られなかった。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

地質断面図①に示したように、本地域の中新統～鮮新統は、背斜、向斜が繰り返しており、地層の傾斜がやや急になる付近とリニアメント位置はほぼ一致している。断層露頭は観察されていないが、褶曲に伴う背斜軸部付近の断層運動により、高位段丘面群および中位段丘面群の傾動や、低位段丘面群の断層崖、撓曲崖を形成したものと考えられる。

１－２）朝日町宮宿～白鷹町古屋敷地区

ⅰ）地形・地質

＜地形＞

最上川は朝日川と合流し、大きく曲流する。最上川の左岸山地は、地すべり多発地帯であり、小丘や沼地が多数存在する。最上川に沿って中位段丘面、低位段丘面群が分布する。

朝日町宮宿から大滝にかけての国道２８７号線の西側は直線的な約５ｍの段差が認められる（ＰｈＭ７－６）。これは日本の活断層において宮宿断層と呼ばれているものに一致する。この南方延長は赤釜のＡＬ１面に幅１００ｍ、高さ１．５～２．０ｍの地塁状の高まりとして現れ、松程では西上がり幅８０ｍの撓曲帯を伴う２．５ｍの段差として現れる。

朝日町雪谷地区では、ＡＬ１～ＡＬ４面が分布し、このうちＡＬ２面とＡＬ３面に北北東－南南西方向に直線的な段差が２列認められる。いずれも東側が高く、西側の段差がＡＬ２面からＡＬ３面にかけて高さ１ｍである。東側からの段差はＡＬ２面に５ｍの段差が認められるが、ＡＬ３面には段差が認められない。この南方延長は、常盤でＡＬ１、ＡＬ２面に急崖となって現れ（ＰｈＭ７－２５）、さらにその南の松程でＡＬ３面に２ｍの段差（ＰｈＭ６－７）、沼の平ではＡＭ面に１～１．５ｍ（ＰｈＭ６－２４）となり次第に不明瞭となる。赤釜では南北に延びる幅１００ｍの地溝状の地形をしており、西側の段差はＡＬ１面では７ｍ、ＡＬ２面で５ｍとなっている（ＰｈＭ７－２０）。また、東側の段差は１～２ｍの段差としてＡＬ１～ＡＬ３面に現れる。

＜地質＞

下位から新第三紀中新統、第四紀更新統の白鷹山火山噴出物および段丘堆積物が分布する。段丘堆積物は、高位段丘面（ＡＨ１面、ＡＨ２面）堆積物、中位段丘面（ＡＭ面）堆積物および低位段丘面（ＡＬ１面～ＡＬ４面）堆積物が分布する。

〔中新統〕

最上川左右両岸の山地部、赤釜付近の丘陵部、最上川流域および支流沿いに分布する。岩相は、暗灰色シルト岩、細粒凝灰岩と凝灰質シルト岩との互層、塊状の細粒～中粒凝灰岩および凝灰質砂岩からなる。

暗灰色シルト岩、凝灰質シルト岩は、最上川流域に広く分布し、朝日町松程の沼ノ平付近の朝日川および皆朱沢流域では、凝灰質砂岩を挟在する。層理面の走向・傾斜は、Ｎ４６ﾟ～５８ﾟＷ・１６ﾟ～２８ﾟＮＥである（Ｐｈ２５５６－１９）。細粒凝灰岩と凝質シルト岩との互層は、朝日町赤釜付近に分布し、凝灰岩には葉理や斜交葉理が顕著に認められる（Ｐｈ２５９５－１）。また、暗灰色塊状のシルト質細粒～中粒砂岩を挟在し、層理面の走向・傾斜は、Ｎ６４ﾟＷ・１２ﾟＮＥである。細粒凝灰岩の走向・傾斜は、ＷＮＷ－ＥＳＥ走向・ＮＥ傾斜からＮＥ走向・Ｗ傾斜へと変化し、向斜構造が認められる。塊状の細粒～中粒凝灰岩および凝灰質砂岩は、須ノ瀬東方および朝日町大滝付近に分布し、凝灰質シルト岩を挟在する部分では、葉理が認められる。葉理面の走向・傾斜は、Ｎ３４ﾟ～４４ﾟＥ・１０ﾟ～５２ﾟＳＥである。白鷹町千作では、凝灰質シルト～細砂からなる。地層は急立し（Ｎ１６Ｅ７２Ｗ）、破砕部が認められる（ＰｈＭ５－８）。

図４－３－７詳細地形区分図（朝日町赤釜・松程地区）

〔白鷹山火山噴出物〕

白鷹町針生付近から朝日町杉山東方にかけての稜線中腹部に分布する。５万分の１地質図幅「荒砥」（山形県，１９７９）によれば、複輝石安山岩の角礫を主体とし、異質岩片を混在する泥流堆積物からなるとされているが，露頭を確認していない。

〔段丘堆積物〕

ＡＨ１面およびＡＨ２面段丘堆積物は、地層の露出がないため、層相は不明である。

ＡＭ面段丘面堆積物は、朝日町宮宿付近では、砂あるいは砂礫を主とし、シルト、植物片濃集層を挟在する。砂礫層はアルコース質中～粗粒砂の基質で、シルト岩、凝灰岩の亜円～円礫（最頻径２～３ｃｍ、最大径８ｃｍ）を含む（Ｍ７－３）。

ＡＬ１面段丘堆積物は、朝日町常盤の須ノ瀬付近では、砂礫からなり、花崗岩類および凝灰岩の亜円～亜角礫（最頻径２～３ｃｍ、最大径８ｃｍ）を主体とし、安山岩、デイサイト、シルト岩の礫を含む。基質は、下部は淡黄灰～淡灰色を呈するシルト質極細粒砂からなり（Ｐｈ２５５６－３１）、上部はアルコース質中粒砂からなる（Ｐｈ２５５６－３３）が、両者の直接の関係は確認されていない。層厚は約３ｍである。

ＡＬ２面段丘堆積物は、朝日町常盤の水口付近では、花崗岩類の礫を主体とする砂礫が小規模に認められる。また、朝日町沼の平付近の皆朱沢沿いでは、中新統の凝灰質シルト岩を不整合に覆って分布する（Ｐｈ２５９５－３，４）。シルト岩、凝灰岩、花崗岩類の亜円～亜角礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径３０ｃｍ）を主体とし、層厚は約３ｍである。基質は、粗粒～中粒砂からなる。礫混じり中粒砂（層厚２０～４０ｃｍ）を挟在し、層理面はほぼ水平である（Ｐｈ２５９５－５，６）。

ＡＬ３面段丘堆積物は、朝日町常盤の赤釜付近では、中新統の暗灰色シルト岩を不整合に覆って分布する（Ｐｈ２５５６－３６）。淘汰の悪い砂礫からなり、花崗岩類の亜円～亜角礫（最頻径３～５ｃｍ、最大径５０ｃｍ）を主体とし、層厚は約５ｍである。

基質は、淡褐色を呈す極粗粒砂からなる。

ＡＬ４面段丘堆積物は、朝日川流域では、中新統の凝灰質シルト岩を不整合に覆って分布する（Ｐｈ２５５６－２０）。巨礫混じりの砂礫からなり、層厚は約３．５ｍである。

花崗岩類の円礫～亜円礫（最頻径２０～３０ｃｍ、最大径８０ｃｍ）を主体とし、安山岩や凝灰岩の礫を含み、基質は、アルコース質粗粒砂からなる。

＜年代＞

豊島（１９７５）は、朝日町宮宿に分布するＡＭ面地表下１５ｍの木片から３２３１０年より古い、また阿子島・米地・西谷（１９８４）は、同じく宮宿付近の開析谷の谷底堆積物中の木片から２３６４０年の１４Ｃ年代を得ている。

今回地表踏査において、朝日町宮宿のＡＭ面の地表下４．０～４．５ｍの木片から、２１８５６±１１４年（ＭＪ１）、２２０７１±１１９年（ＭＪ２）の１４Ｃ年代を得た。

＜地質構造とリニアメントとの関係＞

地層の走向・傾斜の変化から、地質断面図②に示したように、本地域の中新統は、褶曲軸面が東に傾斜した背斜、向斜が繰り返していると考えられる。この褶曲の向斜軸部に段丘面の変位地形が集中する。断層露頭は観察されていないが、褶曲に伴う褶曲軸部付近の断層運動により、朝日町常盤付近の低断層崖および撓曲崖からなる地累・地溝帯の構造を形成したものと考えられる。この運動はＡＬ４面に変位を与えている可能性がある。また褶曲軸面の東に傾斜することや、ＡＨ１面の標高が最上川の西側に比べ東側のほうが高くなることから、東上がりのセンスが優勢であると考えられる。

図４－３－８　ＭＪ１，２年代試料採取位置スケッチ

ⅱ）地形断面調査

朝日町赤釜地区において詳細地形区分図（図４－３－３）に示した４測線で、地形断面測量を実施し、地形断面図を作成した（図４－３－５）。

赤釜Ａ測線ではＡＬ４面が分布しているが、ＡＬ４面に変位は認められない。赤釜Ｂ測線では、ＡＬ３面にみられる撓曲崖が現れており、撓曲による変形幅は７０ｍ、段差は１．４ｍである。赤釜Ｃ及び赤釜Ｄ測線は、南北方向に延びる地溝状地形を横断する測線である。赤釜Ｃ測線はＡＬ２面が分布し、西側の断層崖で５．５ｍ、東側の断層崖で１．５ｍの段差が見られる。赤釜Ｄ測線はＡＬ１面が分布し、西側の断層崖で６．４ｍ、東側の撓曲崖で２．２ｍの段差が見られる。

赤釜地区のＡＬ１面及びＡＬ２面においては、東西方向に地塁－地溝状の地形がみられ、地形面全体としては東上がりのセンスを示すものと考えられる。地表踏査結果を考慮すると、この地区のＡＬ１面は東上がり１０ｍ、ＡＬ２面で東上がり７．０ｍとなる。また本地区では、古い地形面ほど変位地形の段差が大きくなっており（ＡＬ３面＜ＡＬ２面＜ＡＬ１面）、変位の累積を示すものと考えられる。

図４－３－９地形断面図（赤釜Ａ～Ｄ）