長者原断層では最上川左岸の沖積面に低断層崖が認められることから完新世(約10,000年前以降)の活動があった可能性は高く、最上川左岸の低位段丘V面と沖積面に見られる高度に差がないことからこの時期の活動は1回であると考えられる。
(2)変位量及び変位速度の検討
地形測量の結果から、長者原断層の変形幅は最も長い測線である最上川右岸の低位段丘T面では最大400m程度に達する可能性があり、この時の変位量は平坦部分の高度差から約19mとすることができる。ただし、この変位量のうち約12m(全変位量の60%以上)は明瞭な撓曲崖付近の幅約100mの間におこっている。より北側に分布する低位段丘T面での高度差は約23m,最上川左岸の低位段丘T面では明瞭な撓曲崖の高度差が約16mとなっている。
低位段丘T面の形成時期を約5万年前とするならば測量によって得られた高度差から求められる長者原断層の平均変位速度は0.24〜0.46m/1,000年となる。これに対して最上川左岸の沖積面には約2mの段差が見られるが、この沖積面に対して数mの比高を持つ低位段丘V面に見られる高度差もほぼ2m程度である。従って、この沖積面と低位段丘V面の高度差は長者原断層の最終活動を含む完新世の活動履歴を示すものであり、この活動が複数回の累積を示さないとすれば、この高度差約2mは1回の活動の単位変位量(垂直成分)と見なすことができる。
(3)3ヶ年調査結果のまとめ
3ヶ年の調査結果を表4−2−2にまとめた。
表4−2−2長者原断層調査結果の総括表