3−6−5 調査結果

測線Aにおいては比較的ノイズの少ないデータが取得され、測線Bにおいてはややノイズの多い場合や発震条件の良くない場合が認められたが、測点あたりの発震回数を多くすることで取得データの向上を行った。これらの解析結果については得られた探査結果は図3−6−7−1図3−6−7−2(表層構造図),図3−6−8−1図3−6−8−2(重合断面図),図3−6−9−1図3−6−9−2(深度断面図),図3−6−10−1図3−6−10−2(マイグレーション断面図)に示した。

測線Aでは深度300mまでは比較的連続の良い反射面が確認され、深度800m程度は反射面の連続を確認することが可能である。しかし、より深い部分では反射面の連続が乏しいものとなっている。表層部から深度300m前後では、反射面は500m程度の幅をもった褶曲構造を示しているように見られるが、このなかには明瞭は反射面の不連続は認められない。

より下位では反射面の連続を見るとCMP番号100を境界として、東側では反射面の連続が深度約900m付近まで連続するのに対し、これより西側では深度500m程度までしか連続しない。これは反射速度等から見て地下300〜800mに分布する地層が東側に向かって急激に地層層厚および下限深度を増しているものと考えられる。

これより下位の反射面が明瞭に連続しない部分は、周辺地域の地質分布などから判断して層理面の発達の悪い地層が分布するか、貫入岩体の存在によって反射面の連続がとらえられていない可能性が考えられる。

この測線の最も東側には平成9年度調査によって断層露頭が確認され、南北に連続する活断層が想定されているが、これはCMP番号15付近に到達する反射面の不連続線として認識することが可能である。

測線Bでは深度500〜600m付近まで明瞭な反射面の連続を確認することができる。これらの反射面のうちCMP番号250付近より西側のものは測線Aの浅層部と同様に幅500〜400mの背斜構造を確認することができ、より下位には東傾斜の構造が読み取れる。これに対して、CMP番号150よりも東側では深度200〜300mの反射面には褶曲構造は全く見られず、わずかに東傾斜した構造が見られる。これより下位の深度200〜600mには、明瞭な反射面の連続が確認されこの層順には背斜構造が確認された。

CMP番号160〜250の間には測線の東側もしくは西側に見られる反射面の連続が認められない区間が確認される。この境界をなす不連続線は表層でCMP番号160付近から西傾斜を示しているものと、CMP番号200から西傾斜を示すもの、250から東傾斜を示して深度150m付近に達するものとなっている。この反射面の不連続を示す境界は断層によってもたらされたものと考えられるが、2条の西傾斜を示す不連続線の間は一部で反射面の連続が見られるものの、連続性が乏しい。これはこの部分の地層が極めて急傾斜をなすか、あるいは断層運動によって層裏面が著しく乱されているなどの原因が考えられる。ここで2条となっている不連続線(断層面)のうち東側のものは、断層西側に見られる褶曲した地層の連続を反射速度の比較から西側の不連続線(断層面)に比較すると大きな食い違い量を持たない可能性がある。

探査結果によってこの地域の断層は、地表付近では200m程度の幅を持った変形帯をもっている可能性が考えられ、このうち最も累積変位の大きい断層はCMP番号200番付近で地表付近に到達している可能性が高く、より東側にも断層面が存在する可能性が高い。またCMP番号250付近には東傾斜の背面逆断層が存在する可能性も考えられる。

また、A測線およびB測線の探査結果から,この地域の断層系において最も大きな累積変位をもつものは、B測線のほぼ中央部に見られた低角度・西傾斜の断層面でありA測線においてはこれを上回る規模の断層は確認されない。ただし、A,B測線に現れる断層上盤側の褶曲構造は探査範囲において500m程度の幅をもって繰り返しており、この地域における構造運動が東西性の短縮を伴ったものであり、これが比較的新しい時代まで連続していた可能性が考えられる。