(4)No.4(10m)

No.4は断層下盤側のボーリング地点を2箇所とすることにより、下盤側の地層傾斜を検討し地層の変形幅を明らかにすると同時に特定時代面の高度差から、断層全体の累積変位あるいは平均変位速度を求めるため、調査地の最も平野側で実施した。

<地層記載>

No.4では表層から0.60mまでが黒色で植物根などを含む耕作土となっている。この直下には深度1.12mまで黒色腐植層となっているが下部には礫が含まれる。この下位1.48mまでにはやや径の大きな礫が見られる。この礫のマトリックスは腐植質シルトとなっている。

深度1.48〜2.00mは礫が点在する淘汰の良い細粒砂で、2.00〜2.48mは最大径40mmの円礫を含む砂礫層となっており、3.33〜3.36m,3.45〜3.58mには明瞭な黒色腐植土の薄層が見られる。

深度2.48〜3.64m間は細粒砂が優勢で腐植質細粒砂もしくは薄い腐植層が多く挟まれる。これより下位の深度9.82mまでは、礫混じり中〜細粒砂,礫混じりシルト,腐植質シルト、腐植層,中〜細粒砂の不規則な互層となっている。このなかで深度3.64〜3.70m,4.34〜4.55m,5.50〜5.54m,7.93〜7.45m,7.90〜8.30m,8.90〜9.00m,9.74〜9.78mには明瞭な黒色腐植土が見られる。深度9.82m以下には最大径が50mmを超える礫を含む砂礫層が見られる。

No.4孔ではNo.1孔〜No.3孔の間に分布する約10,000年前の地層に大きな変形が認められないことから、変位の幅を明らかにするために2層順の年代測定を行った。この結果深度3.45m付近の腐植層から9,690±130y.B.P.の年代値が得られ、深度8.00mの腐植層からは10,480±70y.B.P.の年代値が得られた。

<ボーリング調査結果>

4孔のボーリング調査から推定される地質断面図を図3−5−2に示した。この結果から断層が想定される崖地形を挟んで西側には、深度5〜6mまでには表層を除いて腐植層の見られない砂礫層が分布し、東側には腐植層,シルト,砂層の不規則な互層が分布していることが明らかとなった。しかし、年代測定の結果からは、この地域の17,000〜14,000年前の地層が緩やかに東へ傾斜していると判断された。従ってこの崖地形は表層部の深度5m付近までは明らかな地質境界となっているが、全体としてはやや幅の広い変形帯の一部である可能性も考えられる。

これらのことからトレンチ調査の実施位置として、表層部の地質境界を横断し下部の地層(腐植層)の変形を確認し得る地点としてボーリング調査のNo.1孔とNo.3孔の間を掘削することとした。