3−4−2 調査結果

地形測量の結果から長者原断層の変形幅は最も長い測線である最上川右岸の低位段丘T面では最大400m程度に達する可能性があり、この時の変位量は平坦部分の高度差から約19mとすることができる。ただし、この変位量のうち約12m(全変位量の60%以上)は明瞭な撓曲街付近の幅約100mの間におこっている。より北側に分布する低位段丘T面での高度差は約23m,最上川左岸の低位段丘T面では明瞭な撓曲街の高度差が約16mとなっている。

低位段丘T面の形成時期を約5万年前とするならば測量によって得られた高度差から求められる長者原断層は0.24〜0.46m/1,000年となる。これに対して最上川左岸の沖積面には約2mの段差が見られるが、この沖積面に対して数mの比高を持つ低位段丘V面に見られる高度差もほぼ2m程度である。従って、この沖積面と低位段丘V面の高度差は長者原断層の最終活動を含む完新世の活動履歴を示すものであり、この活動が複数回の累積を示さないとすれば、この高度差約2mは1回の活動の単位変位量(垂直成分)と見なすことができる。

最上川右岸の低位段丘T面の間に刻まれた沢沿いには幅の狭い沖積低地が断層を横断して連続しているが、地表踏査の結果この沖積低地のうち断層上盤側では平坦面をつくる堆積物は20〜60cmの層厚しか持たず、基底の細礫とこの上位の砂質シルトおよび表層の旧耕作土のみが分布することが明らかとなった。

これに対して断層下盤側では少なくとも1.8m以上の厚さの堆積物が確認されており、下盤側の堆積物は断層活動によって層厚を増しているものと考えられる。この沖積面の堆積物の形成時期については明らかにされていないが、平坦面の連続や河床からの比高がほとんどないことから、堆積物は完新世のものであると考えられる。この平坦面においても地形測量を行ったが、人工改変が大きく明瞭な段差は認識されない。

以上から、長者原断層では完新世の活動があった可能性は高く、最上川左岸の低位段丘V面と沖積面に見られる高度に差がないことからこの時期の活動は1回であると考えられる。