7−2−3 山形盆地断層帯

山形盆地の断層帯の活動性について検討を行った。前項では山形盆地に見られる活断層を4つに区分したが、このうち上山、蔵王西麓の断層系を除くと以下の共通する特徴を持っている。

(1) 断層が並列・雁行する形で地表に現れる区間では、低位段丘U面の変位地形が明らとなっている。しかし、完新世の断層活動が確認されたのは、断層がほぼ1条ないしそれに近い状況にある区間のみであり、並列・雁行する区間では断層活動の分散や活動の分担が起っている可能性が考えられる。

(2)地質構造からみた断層の累積変位は山地と平野の境界をなす位置に分布する断層でより明瞭である。特に、更新世後期の活動に限るとこの傾向はより明瞭となる。ただし、例外として北山丘陵前縁や寒河江市高瀬山付近のように孤立丘を形成する前縁部にも累積変位が認められる。

北山丘陵の場合は並列する断層の変位量を総合してみると山形盆地北部区間では変位量が最大となる地域と考えられ、寒河江市東側は北部区間と南部区間が大きく雁行する部分である。

(3)断層が並列する区間では、地質構造上最も規模の大きいと考えられる断層でも完新世の活動を支持する現象は確認されない。また、段丘面の変位から推定される個々の断層が示す平均変位速度は断層が1条しか確認されない場所に比べて小さくなっている。

(4)断層を個別に扱った場合従来の報告に示されたように、断層の平均変位量は0.1〜1m/1,000年を超えることはなくB級の活断層として扱われるが、並列して分布する断層の変位量を集合して検討すると従来示された平均変位量より大きい変位量を示す可能性が考えられる。

山形北部地域では、断層が並列・雁行するために断層全体の平均変位速度を求めることが困難であるが、北端部および南端部で沖積段丘等に変位が認められることから、完新世の断層活動があったと判断される。

盆地南部地域では寒河江市高瀬山で完新世において派生断層を垂直成分で約2m変位させる活動が確認され、完新世の活動があったことは明らかである。また、この地域は盆地の埋積と扇状地の張り出しによって、累積変位が明瞭に観察されないが盆地の沈降量も含めると比較的大きな平均変位速度を持つ可能性がある。