6−4 解析結果

マイグレーション後の深度断面から、明瞭な反射面および反射面の不連続として認識される断層面について検討を行った。測線のうち西側においては、明瞭な反射面が連続していることが確認される。

この区間の地層について坑井データを参考にして層序区分を行うと、表層から深度500m付近までが庄内層群と考えられる。庄内層群の下部には上下が明瞭な反射面を持つが地層内の反射面がやや乱れた地層の存在が確認できる。この地層は東側の丘陵地に分布する庄内層群中の火砕岩類と考えられる。このことから、この火砕岩の分布高度は350m〜400mの高度差をもっていることが明らかである。

この下位にも明瞭な反射面が深度1.2〜1.3kmまで確認することができる。これらは深度450〜800mまでが常禅寺層、深度800〜900m付近までが観音寺層、深度900〜1100mが丸山層、深度1100〜1300mまでが楯山層と考えられ、より下位にはこの地域の基盤岩として扱うことのできる青沢層が分布すると判断される。

これらの地層は、大きな不連続を持つことなく整合関係にあると判断されるが、全体的に緩やかな褶曲構造を示しており、その振幅は下位層順がわずかに大きい。これらの地層は東に向かって大きな層厚変化を持たずに連続しているが、地表における平野と丘陵地の境界付近に対応して大きく変形している。ここでの地層の傾斜は下位の地層ほど急傾斜を示しており、常禅寺層と庄内層群基底にはわずかな区間であるが斜交関係も認識できる。ただし、この地層の傾斜が反射面の連続から追跡でき得るのはこの区間では深度1000m程度となっており、深度1200m〜1300m付近の青沢層上面は坑井データを参考として判断した。

この区間およびより東側の区間には、丘陵の前縁部に対応する東傾斜の不連続線(断層)が深度200〜500mまで確認することができる。これに対して、丘陵の中央部からより東側の区間では、西傾斜の不連続線(断層)が3条確認することができる。これら西傾斜の不連続線は深度400〜800m付近まで追跡することが反射データのみから可能である。

この区間に分布する地層は西失流川SK−1の坑井データから深度500m付近までは常禅寺層が考えられるが、これらの地層が平野部と丘陵部で大きく異なる可能性は少ないため、平野部の層厚を大きく変化させることなく地層対比を試みたものが図6−11である。

この仮定が支持される場合、これらの地層は丘陵の分布と対応するように大きな背斜構造を示すことになる。また、この背斜構造の西側では東傾斜、東側では西傾斜の断層が形成されたと判断される。

断層面は、西傾斜・東傾斜のいずれをみても深度500〜800m以下の連続が明確には認識できない。これは、この測定データがノイズ等の影響を大きく受ける状況になかったことから、反射面の連続そのものが失われている可能性が考えられる。これに対して、坑井データから予測される青沢層の上面を示す反射面は、やや不連続ながらも反射面として認識することが可能である。しかも、青沢層の上面高度は東に向かって緩やかに傾斜しており、この地域で想定される東上がりの構造運動に青沢層は参加していないと考えられる。

以上のことから、この地域の地下構造は、青沢層の上面を境界として中新世〜更新世の地層がより東側の構造運動を反映した形態を持つ可能性が考えられる。また、この地域で最も連続の良い断層である観音寺断層が、この構造運動を反映した大きな地層変形の中で発生し、基盤岩の上昇によって断層面が直接地表に到達したものではない可能性が考えられる。断層の活動履歴を検討する上で重要な留意点となった。

また、この断面のより東側には酒田衝上断層が位置しておりこの断層の活動がこの反射断面に見られる第四紀層の大きな変形に関与する可能性も考えられる。従って、庄内平野東縁断層帯の活動履歴を明らかにするためには、観音寺断層だけではなく酒田衝上断層にに直結する可能性のある松山断層や最上川以南の断層についての調査が必要となる。