(3)村山市湯野沢−河北町西里地域

村山市湯野沢−河北町西里に至る地域では、更新世後期の地層を切る断層露頭は確認されなかったものの、樽石川沿いでは地質分布の大きな変化から推定される断層位置が、地形変位の累積が認められるリニアメントの延長上に位置することが明らかとなった(図5−3−28)。

千座川以南の地域では段丘面の撓曲や段差によって認識できるリニアメントは、山麓部に収斂し山地と平野の境界に段丘面の撓曲帯を形成している。このことから、山地と平野の境界をなす断層が更新世において繰り返し活動したことは明らかであるが、断層による変位と判断されるリニアメントは2ないし3条となっているため、最終活動を起した断層がいずれであるかの特定は困難であった。

この地域の段丘面の形成時期を特定する手掛かりとして村山市大原付近のIw295地点で年代測定のための試料採取を行った(図5−3−32)。この結果この段丘面を形成したと考えられる砂礫層中から27,630±170y.B.P.の年代値が得られた。また、村山市白鳥付近の最上川左岸Iw112地点で得られた年代値5,440±60y.B.P.(図5−3−32)から、この地域に最も広く分布する段丘面は低位段丘U面であり、この段丘面を侵食して低位段丘V面や沖積段丘面が形成されていると考えられる。従って、この段丘面に見られる低崖は少なくとも25,000年前意向の断層活動を意味することになる。

河北町弥勒寺では時代未詳の砂礫層を切る断層露頭が確認された(図5−3−33,写真5−3−18)。これと同時にこの断層露頭の西側で見られる高位段丘およびこれを形成する段丘堆積物が東に向かって傾斜し断層に近付くにつれて傾斜を増すことは、この断層もしくは断層帯が更新世後期においても累積変位を起していることを示すものである。

河北町西里−寒河江市地域では、湯野沢から南に連続すると考えられる断層位置では更新世の地層を切る断層は確認されていない。しかし、山麓部においては中新世の泥岩を切る小規模な逆断層が観察される(写真5−3−19写真5−3−20)。また、山地と平野の境界付近ではほぼ直立する中新世〜鮮新世の地層が連続して確認されており、この前面に断層が存在する可能性が高い。河北町箕輪付近では低位段丘U面や沖積低地に変位地形が観察され、この区間においては完新世において断層活動が地表まで到達した可能性がある。