この断層の東側には折渡層が分布するが、地層の急傾斜帯が断層に沿って連続している。しかし、これを横断する段丘面、特に低位段丘面には段差や高度差は見られない。
これに対し、沖の原では低位段丘U面に明瞭な段差が見られる。この延長上での高位段丘面の落差は20〜30mとなっている。これは低位段丘U面の落差と比較すると形成時代に対して小規模なものとなっている(付図7−2)。また、下位の山屋層・毒沢層の構造はこの断層を挟んで大きな変化が認められず、層相の大きな変化も見られない。このことから沖の原断層は、新しい時代(更新世後期)に活動したものの、累積変位が少ないかもしくは、古い時代には活動がなかった可能性も考えられる。
尾花沢市毒沢から駒篭にかけての地域は最上川が大きく蛇行する地域となっている。この地域には折渡層が分布し、蛇行地点の下流側には背斜構造がみられ一部に鮭川層が露出している。
大石田町駒篭では、低位段丘T面の傾動と撓曲崖が観察される。地表踏査ではこの崖が直接断層活動によって形成されたことを明らかにすることはできなかったが、リニアメントの西側に極狭い幅で鮮新世の地層が急傾斜を示すことが確認された(図5−3−20)。しかし、このリニアメントを挟んで層相が大きく変化する可能性はあまりなく、このリニアメントが更新世に繰り返し活動を続けた断層が地表に到達しているものとは考えにくくこの地域の構造運動は地層(段丘堆積物も含めた)の変形の継続として現れていると考えられる。
この地域では、低位段丘U面と予測された2地点で年代測定のための試料採取を行った。この結果下流側毒沢西方(JLT26)での年代値は3,510±60y.B.P.と予想よりはるかに新しい年代値が得られた。これに対し、名木沢付近の低位段丘U面での試料(JIw44)からは、28,280±310y.B.P.となり、予想よりやや古い年代値が得られた。段丘面の年代値は全体を網羅する試料数とはなっていないため誤差範囲や複数の試料による再検討が必要なものの、この地域では下流側の背斜構造の成長による河川の蛇行がおこり、この影響を受けて付近に分布する段丘面の離水時期の差が生じている可能性が考えられる。